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小さな美徳

すでに刊行されている、「わたしたちのすべての昨日」「町へゆく道」「夜の声」に、このエッセイ集が加わることによって、ナタリーア・ギンツブルグの初期作品の集大成となるらしい。第二次世界大戦末期から終戦直後にかけて、彼女が書き綴ったエッセイ集。もっともよく知られている 『ある家族の会話』 に先立って執筆されたこれら作品を読了したのちには、是非このエッセイを読むべし。読むべしといったところで、本当にギンツブルグは知られていないのだろうな。それでも翻訳し刊行してくれた方々には頭が下がる。

4896425332小さな美徳
ナタリーア・ギンツブルグ 望月紀子
未知谷 2017-07-31

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【第一部】
アブルッツォの冬
破れ靴
ある友人の肖像
イギリス讃歌とイギリス哀歌
メゾン・ヴォルペ
彼と私
【第二部】
人間の子
私の仕事
沈黙
人間関係
小さな美徳


とにかく好きなギンツブルグ のエッセイは、読むのが嬉しい半面、少し怖いような複雑な気持ちで本を開いた。フィクションを読んでいるうちはいい、でもその内面を覗いてみるのは、少し怖いのだ。
夫の流刑地アブルッツォに付き添って暮らした日々のこと、夫とともに仲の良かったパヴェーゼのこと、二度目の夫との日々の会話(デフォルメと自虐が過ぎるように思うが?)、少し住んだイギリスのこと(彼女にしてはかなり辛辣で驚く)、独自の教育論、極論としては彼女の人生観そのものだった。

第二部はxx論の様相なので、比較的平常心で読んでいられるが、第一部は戦中戦後の彼女の暮らしだ。閉塞的で日常の暮らしが否定された時代が舞台だが、作品と変わらないその静かで何かを飲み込んでしゃべっているような書き方には、涙がでそうになる。夏と冬の2つしか季節がないというアブルッツォでの暮らしは貧しいものだった。本物の絶望と不安を経験した者は、小さな希望にも疑念を抱き、ありきたりの日常にさえ浸ることができない。それでも、夫を失った後に振り返るそこでの暮らしは、生涯最良の時であったという。

自分の仕事に信念を持つこと。「小さな美徳」の章で彼女は”天職”という言葉を盛んに使っている。じっとうずくまり、すべてを飲み込んで過ごした日々の果てに、でも彼女は”書くこと”だけは愚直に真摯に続け、それが天職だと言い切る。書くことが生きることだった彼女の人生は、結果作品を読むことしか出来ない読者に読書以上のものを投げかけているようだ。今更、私が居住まいを正せるものでもないのだろうが、時にはギンツブルグの存在を思い出すくらいのことはしなくては、と思う。

山師カリオストロの大冒険

All Reviewsなるサイトを鹿島茂氏が立ち上げたらしく、最近毎日見ている。これは、インターネット書評無料閲覧サイトで、活字メディア(新聞、週刊誌、月刊誌)に発表された書評を再録してくれるものらしい。書評のアーカイブですね。もちろんサイトそれ自体が存在することが凄いのだけれど、さらにいいのは、過去にまでさかのぼってくれるところ。既に逝去された方のレビューであっても読むことができる。澁澤龍彦氏や、米原万里さんの書評もある。この種村季弘氏の本の書評を書いたのが、同志(?)澁澤龍彦氏。今となってはもう実現できない豪華コンビ。

4006020678山師カリオストロの大冒険 (岩波現代文庫)
種村 季弘
岩波書店 2003-03-14

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私の読書感想文など読んでも仕方ないので、「山師カリオストロの大冒険 (岩波書店)」に飛んで、澁澤氏のお言葉を読んでください。で、以下は蛇足も蛇足。

そもそもカリオストロと云われ、ルパン三世のカリオストロ伯爵か、モーリス・ルブランの「カリオストロ伯爵夫人」しか浮かばない私には、この本はまだ早かったのだ。 種村季弘氏を知らぬわけはないが、彼の魔術、神秘学研究をぶっ飛ばし、評論をぶっ飛ばし、彼の翻訳したドイツ文学を少々読んだくらいの若輩者には、そもそもが恐れ多かった・・・と読み始めてすぐ反省したが、反省は反省として、とにかく最後まで読んだ。

カリオストロ伯爵は、本名ジュゼッペ・バルサモ、シチリア出身の稀代の詐欺師。貧しい家の生まれで、手の付けられないほどの不良少年で故郷にいられなくなって逃げ出したらしい。時は18世紀、フランス革命の御時代だ。カリオストロは医師、錬金術師、山師などいくつも肩書があるが、偽名を使いヨーロッパ各地を放浪し、どうも人心術に長けた人のようで、上流階級に紛れ込み、金持ちから金を巻き上げていた。但し、巻き上げるだけではなく、貧しいものには無償で医療を施し、おまけに金銭まで与えて帰したというから、一時的には人民に物凄く人気があったりするが、似非医療や似非錬金術がばれそうになると、すたこらと次の地へ逃げたので、同じところに3年ととどまらなかったらしい。

カリオストロが紛れ込んだ上流階級の最高峰は、時のフランス王室、ルイ16世の御代だ。そこでかの有名な「首飾り事件」に関わったことによる。そもそもこの「首飾り事件」という事件を知ったのは、なんのことはない、漫画「ベルサイユのばら」を子供の頃にちゃんと読んだからで、漫画とはいえ、この「ベルサイユのばら」はその後、私の試験勉強や読書にどれだけ役立ったことか!今回も、首飾り事件の章は、まこと見事にスラスラと読めたのだった。事件の首謀者、ジャンヌ・ド・ラ・モットが事件には無関係だったカリオストロ伯爵を真犯人として告発したことから、事件に巻き込まれることになったのだが、結局カリオストロ伯爵は無関係として、後に釈放されフランスを追放された。追放後は、どうもパッとしない人生だったようだ。そして教皇庁のお膝元ローマでエジプト・メイソンリーのロッジを開いたことをとがめられ、逮捕され、異端審問にかけられたのち、1795年に獄死した。

嗚呼なんて人生。。。。彼の魔術も錬金術も医術も、どう見ても子供騙し。美顔水や若返り薬を作るからと金持ちのだが、あまり美しくないご婦人に近づき、研究費を出させ、金をもってトンずらするとか、小粒の真珠をかき集めて、超巨大な真珠玉を作り上げるとか、子供の悪戯のようだ。

と、この程度が私の感想だが、これだけだと本に失礼で、本当は(笑)、当時の代表的な知性ともいえるゲーテが、カリオストロの生家を訪ねて『イタリア紀行』に書きあらわし、彼をモデルにした喜劇『大コフタ』を作り上げるほどに心酔した理由とか、18世紀後半と云う大きく時代が転換した時期に人々がこの詐欺師に熱狂した理由----を読み解かなくちゃいけない。これがよくわかんなかったので、種村氏は私には早すぎた。

Nobel prize in literature 2017

さて昨年は、Bobのビックリ受賞だったが、今年のビックリマグニチュードはそれよりは低い。でも、相変わらず、ノーベル文学賞には順当な受賞はなく、へえーーだね。

今年も、記事はGuardianから。日系イギリス人ということで、日本での知名度も高い彼の受賞は大ニュースだけれど、あくまで彼は、イギリス人だから・・・
Kazuo Ishiguro wins the Nobel prize in literature 2017

this is a bit of a cheek for me to have been given this before them.
Cheekってこうやって使うのね!って勉強した。そういえば、Cheekyって形容詞があった。themはまだノーベル賞を手にしていない諸先輩方のこと。

ニュースを聞いた第一印象は、若いのにもう・・・だった。まだ62歳だ。彼が、ノーベル賞候補と云われながら、まだ受賞していない諸先輩方に遠慮する気持ちはわからなくもない。でもそれを言葉に出して云うって事にちょっと驚いた。ノーベル賞は生存している人限定なので、私の大好きなタブッキだって、生きてさえいれば絶対受賞できたと私は今でも思っているから、出来れば年功序列は尊重してもらいたいのが私の意見。村上氏は68歳になってしまい、どうもイシグロ氏とも仲がよいようで、そんなことで、関係が崩れることもなかろうが、年功序列が気になる私。それで行けば、Margaret Atwoodに受賞させてあげたかったなあ、と思うんだけど。。彼女は70代後半だと思う。

そして、それから何に驚くかというと、出版界の大フィーバー(言い過ぎか・・・)。本人はともかく実際に誰も予期していなかったわけで、早川書房からの注文で、現在ワッセワッセと印刷機が回っているのだろう。本屋チェックはしていないが、嬉しい悲鳴なので、水を差すことは控えるけど、イシグロ氏はイギリス人だからね!彼の作品はガイブンだからね!、あくまで皆さまが読むのは、読みにくいと評判の翻訳本だからね!!日本のニュースは5歳まで過ごした日本での生活が彼の作家人生の基本になっているくらいの勢いで紹介しているが、イシグロ氏自身は日本での記憶はほとんどなく(当たり前だ)、自分のルーツが日本であってもそのDNAをどこまで引き継いでいるのかははなはだ疑問 (水を差すわけじゃないが)。

実は私はイシグロ氏の本は1冊も読んでいない。人気者は避けていたらこんなことになっていた。でも映画になった「The Remains of the Day」は見ている。「Never let me go」も何となく粗筋くらいは知っている。こんなに人気になってしまったらますます手が出せなくなるが、どうも聞くところによると、彼の作品は英語でもそれほど難解ではないらしい。実はこんな作品があるらしく、密かに評価が高いという。
「An Artist of the Floating World」
Kindleなら品切れはないので、Kindleで読もうかな?

とにかくおめでとうございます。去年のBobでは出版界はさして潤うことがなかったので、今年はしばらくお祭り騒ぎだね。それはそれでよいことです。

未来いそっぷ

実家の本棚を物色していたら、こんなものが出てきた。失礼ながら時間潰しに読み始めてみた。執着して読んでいたわけではないが、日本人なら誰でも(笑)一度は、星新一のショートショートを読んでるはず、と私は決めてかかっている。私だって(覚えちゃいないが)子供の頃や学生時代2冊や3冊読んでいると思う。四半世紀以上経て、改めて読む星新一はどんなだろう?

4101098263未来いそっぷ (新潮文庫)
星 新一
新潮社 1982-08-27

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星新一をWikiで検索してみた。昔は本が面白いとかそういうことしか見ていなかったが、どんな人物がこんな作品を生み出せたのだろうと、興味を抱かせるショートショートだということに気づいた。
星新一は大正15年、1926年の生まれだから、軍国主義に染まりきった時代に学生だったことになるが、どうも軍事色は嫌っていたようだ。可笑しい話しではあるが、ゲラゲラと笑うものではなく、寓話的ではあるが、攻撃的な批判ではない。文体も極めてシンプルで、稚拙にさえ見えるのに、軽薄な感じはなくむしろ品を感じる。悪人も描かない。

ショートショートの大人気SF作家は、普通に考えると大衆作家と化して、ブンガク的ではないと思われそうだが、彼の場合、そうも言いきれない。下記はWikiからのコピーで、筒井康隆の評。
星の作品について、ストイシズムによる自己規制と、人間に対する深い理解、底知れぬ愛情や多元的な姿勢が、彼の作品に一種の透明感を与えている。その一方で日本人が小説において喜ぶような、怨念や覗き趣味、現代への密着感やなま臭さや攻撃性が奪われ、結果として日本の評論家にとっては星の作品が評価しづらくなり、時として的はずれな批評をされることになった。

私には至極納得のコメント。敢えて未来を予言したわけでもなかろうが、技術が飛躍的に進歩してしまった現代になって、やっと世の中が星新一を理解できるようになったと思わせる位の、先見性もある。

こんなショートショートを1000篇以上も残した彼の人物像にはやはり興味はあるし、探せば、”人間・星新一”の本もあるのだが、それは読まずにいようと思う、少なくとも300篇くらい読んでからにしよう。それを知って、その人間・星新一を通して、彼の作品は読んではいけないような気がする。それが色眼鏡ではないにせよ、やっぱりそれはない方がいいんだろうな。

で、どれが面白かったのかと云うと、どれも面白かったのよ・・・

フランス組曲

高止まりしてなかなか手を出せなかった『フランス組曲』を断念して買った。イレーヌ ネミロフスキー の4冊目。今までの3冊は最近発売されたが、イレーヌ ネミロフスキー といえば、これでしょ、というのが映画化もされた『フランス組曲』、いや、これしか知らない、映画なら見たことある、という方が多いとは思うが、私は映画は見ていない。『フランス組曲』でググると、小説より、映画ばかりがヒットする。評判はよい。でも、イレーヌ ネミロフスキーの生い立ちや、死後数十年が経過し、奇跡のように陽の目を見ることになったエピソードが多すぎ(それはそれで商売上は大事だが)、小説それ自体をじっくりと書いてくれているサイトは案外なかった。こういうところは、映画化されてしまった弊害よね・・・と私なんかは時々思う。
「クリロフ事件」
「ダヴィッド・ゴルデル」
「秋の雪」

4560082456フランス組曲
イレーヌ ネミロフスキー 野崎 歓
白水社 2012-10-25

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あとがきもいれると560ページ。通勤の友にするには厚過ぎる。そしてバッグに押し込まれて旅をした本は劣化する。

第一部の「六月の嵐」と第2部の「ドルチェ」、そして著者の書簡など資料が一杯ついている。訳者は、野崎歓と平岡敦の両名。 贅沢だ。ネミロフスキーの構想としては4部(5部?)あったのだが、残りの2部(3部?)は完成しないままアウシュビッツで絶命。書簡や制作ノートがこれだけ豊富な本も珍しいが、1部・2部を読み終え、実際に巻末資料を読んでちょっと驚いた。作家がどのように執筆活動を行うのか、構成を練るのか、は、素人には知る由もないし、それぞれ独自のやり方があるのだろう。が、こんなことを考えて彼女は作品を作り、そして作品を読んでみると、とても腑に落ちる箇所が多い。そして彼女の、どの登場人物に肩入れすることなく、そして過剰にセンチメンタルにも感情的にもならない、ちょっと引いた視線というのもなるほどなんだな。悲しみを表現するのに直接的に涙を描くのではない、当の本人さえも描かず、その周辺を描くことで伝わるもの・・・ まあ、そんな感じなんだろ。お涙頂戴でも勧善懲悪でもないのは彼女の特徴ともいえるし、それが私の好きなところだし、この良い意味での冷徹な眼こそがネミロフスキー。

作品それ自体については、実は、面白かったも物足りなかったもない。これは明らかに完結していない。起承転結で言えば、起と承しかない。物語はこれから佳境を迎えるのに終わってしまった。登場人物が多いが、混乱しない。つまり緻密な構成とキャラクター作りがきちんとしているんだろう。翻訳も読みやすい。この重奏的な構成がまさしく組曲だが、正直、中途半端に煽られて、手を引かれた気分(笑)。独立したエピソードとして、第2部の「ドルチェ」で映画を作ったというのは、ある意味正解で、映画だけ見ていれば、フラストレーションはなかった。それがとにかく残念。かといって、他の誰かが続きを書いても仕方あるまい。だから巻末の沢山の資料まで読了して、どうにか心が治まる感じだ。それでも読んだことに後悔はないけどね。

The Man Who Wouldn't Get Up and Other Stories

邦訳がつい最近発売されて(邦題:起きようとしない男)、ああ~~と思い出したDavid Lodge.

「The British Museum is Falling Down」やら、「Small World」やら、「Changing Places」やら、「Nice Work」やら、「Paradise News」を読んでみたが、それもかれこれ5年も前の話しだった。このオリジナルは1990年代の終わり頃発売されているようなので、邦訳がようやく・・・の本。Lodge先生には珍しい(と思う)短篇集。

1784704687The Man Who Wouldn't Get Up and Other Stories
David Lodge
Vintage Books 2017-02-28

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以下8篇収録:書かれた時期は1950年代から最新のものでは21世紀に突入したものもあり、時代背景もそれぞれ。
The Man Who Wouldn't Get Up
The Miser
My First Job
Where the Climate's Sultry
Hotel des Boobs
Pastoral
A Wedding to Remember
My Last Missis


Lodge先生の本は、私なんかには一生に一度ここでしか絶対に出会わないんじゃないかと思われる単語が多すぎる。長篇だとそのあたりは見なかったことにしてもどうにかなるが、短篇は迷子になったまま話しが終わってしまうことがある。真ん中2篇は中弛みしたが、でもそれ以外はどうにかなった(どうにか・・・)。今までの作品の印象からすると、この短篇集は相変わらずだなあ・・・という気持ちが湧く半面、ちょっとおとなしい感じはする。おとなしいは、ドタバタ具合やどんでん返しの程度のレベルを云うのだが、おとなしいだけにどこか深淵な雰囲気も漂う。カトリック教義ももれなく随所にでてくる。そして、やっぱりどこへ行っても何だかちょっと滑稽な英国人が可笑しい。

一番面白かったのは、タイトルにもなった『The Man Who Wouldn't Get Up』。チックリットみたいで一番すんなり読めたのは『A Wedding to Remember』。チックリットみたいと思っていたが、終わり方はただのチックリットじゃなかったところが、ちょっとアカデミック風。
 
”起きようとしない”という発想も凄いが、これにInspireされて作ってしまった家具(?)がこれ。
For The Man Who Wouldn’t Get Up – Hommage to David Lodge
Lodge先生のおひざ元、バーミンガムのアートギャラリーにあるらしい。マッサージで使うような穴のあいたところに顔をはめ込み、書いたり読んだりできるそうだが、食べる時はどうするんだろう?とっても飲み込みずらそうだ。『The Man Who Wouldn't Get Up』は、怠惰で起きないわけではなく、生きることに厭きてしまった男。どこまで厭きればいいのか私には一生わからないだろうが、起きないという決断は、いわば人生放棄で、そこが単に笑って終われないLodge先生の本。

新アラビア夜話

Robert Louis Balfour Stevensonと云われ、『宝島』 『ジキル博士とハイド氏』 と云われ、これだけ有名だがどちらも読んでおらず、知っている気になっていたが、実は知らない。スティーヴンスンについて、つらつらとググってみたが、なんだかぼーっとした印象。

B00H6XBDA0新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫)
スティーヴンスン 南條 竹則
光文社 2007-09-20

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短篇集というよりは、2篇の連作。
『自殺クラブ』
    「クリームタルトを持った若者の話」
    「医者とサラトガトランクの話」
    「二輪馬車の冒険」)、
『ラージャのダイヤモンド』
    「丸箱の話」
    「若い聖職者の話」
    「緑の日除けがある家の話」
    「フロリゼル王子と刑事の冒険」


2篇に共通して登場するのは、ボヘミア王子のフロリゼル王子と、その部下ジェラルディーン大佐。二人はロンドンに滞在して身分を隠して、探偵ごっこのようなものをやるのだが、出ずっぱりというより、事件に絡んで時々登場・・・位の頻度ででてくる。19世紀ロンドンに滞在するちょっと異国の雰囲気を漂わせるボヘミア王子が、”新”アラビア色なのかな?

7篇にはそれぞれひとり主役(?)が現れるのだが、それが総じてちょっと間抜けというのが、可笑しい。話しはミステリ仕立てなのだが、時代といい”アラビアンナイト”といい、どこか優雅。某国の王子様故、優雅すぎて何が起きてもあまり危機感がなさそうだが、それも一興で、高貴なお人でありながら、正義感の葛藤もあったりして、結末は一種のHappy Endだが、それもそれでいいかな。

ネタバレになるが、ラージャのダイヤモンド事件の決着後、最後の最後で意外なオチがある。フロリゼル王子があまりにも祖国をないがしろにしていた間、ボヘミアでは政変が起き、王子様は国外追放の身になり、落ち着いた先はロンドンで煙草屋の店主になる。煙草屋といっても、日本の煙草屋をイメージしてはならず、シガーバーみたいなもんだろうが、そこでも相変わらず優雅なご様子。スティーヴンスン 、洒落たことをしてくれる。

何度か書いている気がするが、光文社古典新訳文庫は、本当に読みやすい。字が大きめで、行間広目で訳も良い意味で今時になっている。20-30年前に出版された本だとか、昔の岩波文庫に遭遇すると、あ~~また今度読もう・・・と一旦後回しにすることもある中で、光文社古典新訳文庫だと、まあ、読んどくか・・・の気分になれる。本読みは時に自虐的に敢えてとっつきにくい本を読むことで、自分を戒めていたりするのだが、光文社古典新訳文庫が目の前にあると、その字面のとっつきやすさに惹かれてしまう。これで古典名作に手が延びるなら、光文社の思う壺になってもいい。

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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