Entries

クレーン男

タイトルだけはどこかで聞いたことがあった。「クレーン男」って何?? 日曜日に近所をフラフラと散歩し、久しぶりに町の小さな本屋さん(小さいがかなり良い)に行ってみた。そこで、Amazonのサイトばっかり見ていないで、たまには実店舗に行かなきゃ、と改めて思った。パソコンでもタイトル買いは出来るけど、装丁買いはできないよね・・・(したいのか?)
クレーン男クレーン男
(2002/02)
ライナー チムニク

商品詳細を見る
Reiner Zimnikは現ポーランド領シュレジエン地方の生まれで、戦後ドイツを代表する絵本作家だそう。翻訳は矢川澄子さん。児童書は全然読まないけれど、きっと子供の頃にはお世話になったであろう翻訳家さん。簡潔で知的で、なかなかよい翻訳だった(本屋で立ち読みしていて、この翻訳なら読めると思った)。

この本、児童文学にして絵本。授業中つまらないからノートの片隅に落書きしちゃいました、という感じのペン画で色はなし。紙はかなり厚めのしっかりした紙で、白ではなくグレーがかったわら半紙風。平易な語り口で漢字も少な目なあたりは児童文学なのだけど、私の嫌いな「です・ます」調ではなく、字も小さめ。寓話風でユーモアの仮面を被ってはいるけど、子供が読んでいいんだろうか?と思える程の含みを持った内容。

川岸にできた巨大クレーンに惚れ込み、そこで暮らし続けたクレーン男の人生の話し。食事も寝泊りもクレーンの上、毎日クレーンの操縦をし、やがて時が移り過ぎ戦争が来て、町の人々がいなくなり、友だちのレクトロもいなくなり、クレーンが建っていた地は海に変わる。クレーンの仕事がなくなっても、油を差しサビをとり、毎日クレーンの手入れをしながら、海の魚を釣り、そして海を行き交う船のために魚油カンテラで灯台の役割も果たす。ひとりぼっちの毎日にある日鷲が現れ、友だちになり、楽しい時には一緒にユーカリボンボンを食べ、ローレライを口笛で吹き、夜になるとそれぞれの自分の星を眺める。再び大地が甦り、緑と花々が甦り、町と人々が戻るが、クレーンはその寿命を終え、最後に大地に降り立ったクレーン男は、大きな山の向こうへ消えていく。

歳をとったクレーン男が共に生きていたクレーンの寿命を悟り、こう言う。
「わかってる」と、年とったクレーンオトコはいった。「そして、ここにあるこいつは、とりこわさなくちゃならない」と、しずかにいった。「そして、きみは」と市長がいった。年とったクレーンオトコは、つぶやいた。「ぼくはつかれた」

エンディングはちょっと哀しいので、一番笑ったシーンを最後に書いておこうかな。戦争が起きる前、サーカスの象が暑さのあまり暴れ出し、クレーン男の働きでようやく落ち着く。反省してショボくれた象に、サーカスの女芸人がバナナを与えると、象は小さな声でこう言う。「かたじけない」
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/120-6542bf29

トラックバック

コメント

[C81] ありゃぁ・・・

なんだかしんみりしますな・・・
  • 2011-09-16 10:56
  • さかい@tadoku.org
  • URL
  • 編集

[C82] この本オススメですよ、さかぽんには。

しんみりしましたよ、最後は。それまで何が起ころうと動揺せずに(そう見えた)黙々と日々過ごしてきたクレーン男が「ぼくはつかれた」と言った時・・・

「かたじけない」の日本語は見事だと思いました!おもわず原語(ドイツ語?)は何だったんだろうと知りたくなった。
  • 2011-09-17 00:28
  • Green
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- - 1 2 3 45
6 7 8 9 10 1112
13 14 15 16 17 1819
20 21 22 23 24 2526
27 28 29 30 - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア