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Michel Houellebecqは3冊目くらい。問題作だの、熱狂的ファンだの、話題を振りまいているらしいので、「闘争領域の拡大」も読んだし、「素粒子」も読んだ。今回論争を巻き起こした理由は、扱ったテーマがタイを舞台にしたセックスツーリズムや、イスラム原理主義への嫌悪感の記述からだろうけど、Houellebecqの作品はとにかく現代そのもので、豊かさを達成してしまった西洋諸国の空虚な若者、肥大化した社会システムの中に埋没する己、他人と関われない人々、物理的には不幸でないにしても精神が不幸(だと思っている)現代人がしつこく描かれる。高度資本社会における個人という私が苦手な分野。一部のインテリや富裕層は眉をひそめ、庶民は日々何となく感じていながら言わずにいることを、彼は言ってくれているってことか。
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(2002/09)
ミシェル ウエルベック

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そうは言っても、Michael Houellebecqくらいしか現役のフランス作家で商業的に数字を取れる作家っていないんじゃないか、というのがいつもの古本カフェのお兄さんとの一致した意見。文体は軽くてスラスラと読めるし、翻訳も上手、でもこの人の本って読み終わったあと明るい気持ちには絶対になれない。それはストーリーが明るいとか暗いとかではなくて、最後になっても閉塞感しかなく、俗な言い方をするとウジウジした主人公にうんざりする(これがまさしく現代ってことだ)。

主人公はフランスの40男で公務員のミッシェル。自評、地味で目立たない、生きる気力など全く感じられない男。でも社会に対する表立っては言わない辛辣な悪態は、時に笑ってしまうくらい同意できる。タイへのツアーで一緒になった若いフランス女性と恋人同士になり一緒に暮らし始め、生まれて初めて幸福感に浸る。女性は旅行会社のエリート社員で、離婚寸前だけど仕事が出来る男性上司とのコンビで死ぬほど働く毎日。西洋諸国でのマンネリ化したツアーを打ち破る画期的な企画がミッシェルの発案、売春ツアーでこれが大当たする。最後はテロに巻き込まれ、恋人を失うというショッキングな展開で、1人残されたミッシェルが社会に嫌悪し完全にそこから孤立した中で生きていくシーンで終わる。生きたいという心を失い、でもそれは死にたいという強い願望さえない人生。

行動社会学者が演説をぶる中、何のアイディアもないその空っぽなセリフを聞いている場面の文章。
社会が相手では我々の力で変えられるわけがない。順応するしかないんだ。問題はどうやって順応するかってことなんだ。

人道主義や形だけのモラルをズタズタに扱き下ろすこの本の裏には、ちっぽけな現代人が幸福であるということは、倫理的に正しいかどうかはどうでもいい、だから倫理的正しさを敢えて無視する潔さがある。でも読了後は相変わらず明るい気持ちになれない。気付いているくせに、見たくないから見ずにいたものを無理に見せられた気分。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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