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老いぼれグリンゴ

こちらの本のもう1作の方。Gringo (グリンゴ) とはスペイン語でアメリカ人の蔑称。ラテンアメリカ文学には時々出てくる言葉。"老いぼれグリンゴ"とは誰かというと、『悪魔の辞典』で有名なアメリカの作家アンブローズ・ビアス。彼は、南北戦争では北軍兵士で、20世紀初頭、革命の混乱期にあったメキシコに入り消息を絶つ。アメリカ文学史上もっとも有名な失踪事件のひとつだそうで、100年が経過した今となっても、その真相は謎らしい。この本はそのアンブローズ・ビアスを主人公にして、メキシコとそしてアメリカを描く。
パタゴニア/老いぼれグリンゴ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-8)パタゴニア/老いぼれグリンゴ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-8)
(2009/06/11)
ブルース・チャトウィン、カルロス・フエンテス 他

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ラテンアメリカには手を出せても、メキシコには何か躊躇させるものがずっとあった。メキシコにはいつもアメリカが付いて回る。アメリカ南部のフロンティア、メキシコ。メキシコ論、そしてアメリカ合衆国批判、この本はそうテーマづけられている。2つの国の国境はリオ・グランデ川(大きな川)、メキシコではリオ・ブラボ(荒々しい川)と呼ばれる二重の名を持つ川。
「・・・そして思い出すんだ。わたしたちがインディアンを殺したことを。インディアンの女とセックスをし、少なくとも混血の国を創る勇気を持たなかったことを。わたしたちは肌の色が違う人々をいつまでも殺し続けるという事業にとらわれている。メキシコはわたしたちがなりえたものの証拠なんだ。」
インディアンを殺したために容易に統一でき、急成長を遂げたアメリカ合衆国と、混血を認め許容したことで混乱と革命を味わい、アメリカに領土も奪われたメキシコ。テキサスもカリフォルニアも昔はメキシコの領土だった。リオ・グランデ / リオ・ブラボは 「国境じゃない、傷跡だ」

革命の最中にメキシコの大農園に家庭教師としてやってきたアメリカ人女性ハリエットの回想から物語は始まる。 「みたくれのいい死体になりたくて」 メキシコに来た老いたアメリカ人(アンブローズ・ビアス)、革命戦士トマス・アローヨ将軍、反乱軍に加わることで同じ場所に居合わせてしまった三人が、出会って分かれる(男たちは死に、女だけが生き残る)、話しの軸はそれだけだけど、3人がそこに至るまでの過去の話が挟まれ、女が語る回想の様相を呈しながら、ふと気付くと別の人物のモノローグがあり、過去の話しかと思うと現代に引き戻され、かなり重層的(ポリフォニックと言うらしい)な構成でどこにいるのかわからなくなる。三角関係といったらいいのか、愛憎がひしめき合い、その愛憎は3人の愛憎であり、3人のIdentityであり、そしてアメリカ合衆国とメキシコの愛憎であり、植民地化され続け、侵略され続け、長い長い革命を味わう混血の国メキシコのIdentityとなる。アメリカ側から見た何ともシンプルなメキシコに比べ、愛も憎も所詮同じ、残酷さも優しさも同じ、公平も不公平も同じ、メキシコはそんな不可解で度量のデカいところなのだそう。グリンゴは蔑称でありながら、必ずしも憎しみだけではなく、そこには不思議だけれど愛がある。

老いぼれグリンゴ、アンブローズ・ビアスが旅行鞄に入れたのは、ベーコンのサンドイッチ、剃刀、歯ブラシ、きれいなワイシャツ、下着のあいだに隠したコルト銃、そして自著2冊と『ドン・キホーテ』。
「これまで、一度も『ドン・キホーテ』が読めなかった。死ぬまでに読んでみたくてね。もう書くのは永久にやめたんだ」 
『ドン・キホーテ』 か・・・(余韻の意味は自分でも不明)
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