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聖なる酔っ払いの伝説

「ラデツキー行進曲」から読むか「聖なる酔っ払いの伝説」から読むか、私にとっては何故か今まで未開の作家だったヨーゼフ・ロート(Joseph Roth)にやっと到着(でもどこを経由して到着したのかが思い出せない)。オーストリアのユダヤ系作家、現在はウクライナ領だけど、彼が生まれた1894年はオーストリア・ハンガリー帝国時代、ウィーン文化圏内で、ポーランド人、ウクライナ人、オーストリア人、ドイツ人、ルーマニア人、そしてユダヤ人、という他民族構成、当然様々な言語が共存した場所だったそう。ウィーン、ベルリンで特派員としてヨーロッパを飛び回り、黄金の20年代を過ごすが、妻が精神異常をきたし、大恐慌後のナチズム台頭でフランスへ逃げ、酒に溺れ、1939年パリのホテルの玄関でバッタリと倒れ没する。妻はナチの制定した「遺伝病防止法」の適用を受け、その翌年精神病院で殺される。これだけ波乱万丈でありながら、作風はと言えば、これが夢見がち。

聖なる酔っぱらいの伝説 (白水Uブックス)
聖なる酔っ払いの伝説

子供でも読めそうな寓話のような物語が3篇。
「聖なる酔っ払いの伝説」
「四月、ある愛の物語」
「皇帝の胸像」

セーヌ河の橋の下で暮らすボヘミアンと聖女テレーズと絡めたを奇蹟の話し「聖なる酔っ払いの伝説」、四月のある夜町に到着した流れ者が、そこで恋をし、でも「自分はもはやこの町の一部ではないことを怪しんだ」結果、New Yorkへ渡る「四月、ある愛の物語」、そしてJoseph Roth自身の帝国への思いを主人公の伯爵に語らせたと思える「皇帝の胸像」

世界史の気まぐれは抽象的であるのに対して、民衆の愛憎はすこぶる具体的だった。
「民族は甲斐もなく、個人の美徳よりももっと疑わしい国家の美徳を求めている。だからこそわたしは国家、しかるべき民族国家をにくむのだ。」


翻訳だけれど、オリジナルの文章は絶対に美しいのだろうと思わせてくれる。どれもハッピーエンドとは違うし、どうにも寂しげなんだけど(1篇目より2編目、2編目より3篇目と、段々と現実が透けて見えるから寂しさが増す)、読み終わった後、相反するはずのすっきり感と余韻が共存して残る。でもJoseph Rothには怒りとか希望とかが感じられない。過去の中に閉じこもったまま昔を回帰し、アルコールに身を沈めてそして異国の地で果てたのか?

寝ようと思いながら、本を開いたら閉じられず結局3篇読みきってしまった。
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流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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