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マリー・アントワネット 下

時々私って凄い、と思う(ハハハ・・・)。上巻を読んで予言(?)したことが、いきなり下巻冒頭に出てくる。 「Zweigの視点で書かれている。」 「この人は心理描写の達人なんだろう。」 ほら、見てみい!!
下巻は「幕間の問いかけ」という副題の巻から始まり、伝記作家としてのZweigの姿勢が書かれている。それは、信憑性のある歴史的証拠の寄せ集めでは終わらないということ。
「肉眼に強く結びついた探求が終わったところから、自由で軽やかな心眼による観察技法が始める。古文書学が役に立たないところでは、心理学の有用さが実証されねばならず、心理学によって論理的に推定された可能性は、書類や事実によるだけの真実よりもっと真であることがしばしばだ。・・・感情というものは常に、どんな記録文書より人間についてよく知っているからだ。」

マリー・アントワネット 下 (角川文庫)マリー・アントワネット 下 (角川文庫)
(2007/01)
シュテファン ツヴァイク

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下巻は「ベルサイユのばら」しかフランス革命の知識がない者ににとっては、かくも長く混沌とした時代があったのかと驚く。学校では1789年はフランス革命と教えられ、ルイ16世もマリー・アントワネットもすぐに断頭台の露と消えたかのような錯覚をしがちだけど、革命なんて後世の人間がそう名付けただけであって (1603年に江戸幕府がいきなり華々しく開かれたという誤解?と同じだ)、当時はただの混乱だけだったんだろう。革命(バスティーユ牢獄襲撃)から3年間は一応王政がまがりなりにも続いていて、王と王妃が処刑されたのは更にその1年後、1793年のこと。出来事の列挙に終わらず、群雄割拠の混沌とした様子や、加速度的に盛り上がっていく革命の勢い(そして行き過ぎがあり、揺れ戻しがあるのだけど)が細かに記述され、教科書でもない、マンガでもない世界は実に生々しい。

Zweigのマリー・アントワネット観は最初から一貫している。ごくごく普通の女性、忍耐力に欠け、読むことも書くことも嫌いで、遊ぶことが大好きで我慢することを知らず、理論的に思考したり、人の話しにじっと耳を傾けることもなく、およそ後世の人間が勝手に想像する「高貴な王妃」ではない。ただ時代に翻弄され、劇的な人生を送ることになったその運命(強運なのか悲運というべきか)は凄い。いい人でも悪い人でもなく、好きでも嫌いでもなく、美化するでも卑下するでもなく、ひたすら人間 ”マリー・アントワネット” が描かれる。運命が過酷になればなるほど、最後は牢獄のような場所で死を待つだけになるほど、彼女の誇りは高まるのだけど、終盤にはこれはもう伝記だとは言えない程、Zweigの語りが聞ける。マリー・アントワネットの人生は良くも悪くもドラマチックで、世の中には相当なガセネタが蔓延しているらしいけど、そんな下世話な噂話はバッサリ切り捨て、事実だけでは描ききれないその先は、彼の人間心理への深い洞察力で語っていく。そこがこの本が評価される所以なのだろう。というのか、そこまで書いてしまってもいいのだと気付かされる。

「ベルサイユのばら」には描かれなかったところが実は面白いんだよ。。
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