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犯罪

「刑事事件弁護士である著者が現実の事件を題材にして描き挙げた珠玉の短編集。ドイツ本国で45万部、世界32カ国で翻訳され、数々の文学賞を受賞した圧巻の傑作」という触れこみ。Amazonのレビューがやたらいい。「強烈」「傑作」「衝撃」とまあ、絶賛する数々の言葉が並ぶ。ミステリーが得意な東京創元社。半信半疑だったけど、そこまで言うならということで買ってみた。
犯罪犯罪
(2011/06/11)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

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なかなか面白かった。絶賛されるのは頷ける(でも強烈とか衝撃とまでは言わなくても・・・)。現実に起きた事件を元に、弁護士である著者と主人公の弁護士をだぶらせて、人間の心の闇を覗くような犯罪ばかりを集めた短篇集。短篇に登場する犯罪を犯した人たちは皆、最初は普通の人間だったと思われる。何かをきっかけに精神の均衡が崩れ始め、自分でも気付かぬうちに異次元に踏み込んでしまう。現実を元に書かれていると言われると、無気味この上ないけれど、脚色もあるだろうからと慰めて考えれば、現代版不条理小説とも言えるかも。

感情を極力排した乾いた文書、くどい情景描写は全くなし、だから場面は断片的にどんどん展開し、登場人物が饒舌に語ることもなく、ストーリーはどれもトリック頼みの犯罪ではなく、グロテスクで残酷で悲惨。モノクロドキュメンタリー映画、バックグラウンドミュージック一切なし、といった感じ。犯罪そのものの顛末はたぶんどうでもよいのだろう。これ以上削るところはない、というところまで削ってしまった文章の断片と断片の間にあるこの深い闇はクセになりそうな後味。

本のレビューを読んでいると漏れなく行き当たるのが、最後のページにポツリとあるこの言葉への言及。
Ceci n' est pas une pomme (これはりんごではない)
これって↓。シュールレアリズムの巨匠、ルネ・マグリット。11篇のどれにもリンゴが登場する。
pomme リンゴはアダムとイブの楽園、人間の原罪のあのリンゴ?正常と異常の曖昧な境界線。リンゴと呼ばれるリンゴの曖昧さ。リンゴは果たして本当にリンゴなのか?罪は本当に罪なのか?

次回作は『罪(仮)』(2012年刊行予定)らしいけど、実はさらにその次、ナチの黒い影を背負った戦後ドイツの法曹界スキャンダルを題材にした本を書いているらしい。こっちが気になる。
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コメント

[C89] おいしそうな非林檎

これも読みたくなるなあ

そのうち貸してください!
  • 2011-10-02 14:21
  • さかい@tadoku.org
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[C90] リンゴに非ず

世界32カ国で翻訳され、ってくらいなので、当然英語版もありますよ~

「Crime」 Ferdinand Von Schirach

Kindle版もあるみたいですよ~
  • 2011-10-02 17:10
  • Green
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