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Two Caravans

少し前に「おっぱいとトラクター」 というちょっと恥ずかし気なタイトルの本を読んだけど、笑えるけど品が良く、可笑しいけれど哀愁も漂うという、なかなかのいぶし銀作品だったので、今度はそのMarina Lewyckaを原書でいってみる。Guardianは "Hilarious" って評し、Sunday Times は ”A Short History of Tractors in Ukrainian was entertaining, but this is better" って言っている。期待させてくれるなあ・・・舞台もイギリスはケント州(私がイギリスで滞在していたところ)ってことでちょっと触手も伸びた。
Two CaravansTwo Caravans
(2008/03/05)
Marina Lewycka

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Strawberry field で Strawberry pickerとして働くのは、東欧やアフリカや中国からきた移民(というか出稼ぎ労働者というのか)たち。EUに加盟しているかしていないかで、海外からの労働者の状況も以前とは異なる。場所はイギリス南部、季節は夏、というのどかな風景と相反して、労働者たちは男女別々のキャラバン(要はプレハブ住宅だよね)に押し込められ、お風呂も食事も粗末で、雇い主からは明らかに搾取されている。その後働くことになる養鶏所はさらに残酷で、搾取を超え、人身売買の現実も描かれる。「おっぱいとトラクター」はウクライナからイギリスに移住した家族の話しで、悲しくて辛い過去もあるけれど、それでもイギリス人として生きている家族の話しだけれど、「Two Caravans」は移民・出稼ぎ外国人労働者の視点。シリアスな内容を含みながらも、前半は「おっぱいとトラクター」で見せてくれたドタバタぶりが炸裂し、そんな悲惨な状況もコメディータッチで描かれる。無垢というのか世間知らずというのか、若い出稼ぎ労働者たちの語り口は、全く悲壮感がないけれど、背景にある経済格差や文化の違いを背負った彼らから見る経済大国イギリスの暮らしは、逆に資本主義の歪みを浮き彫りにさせる結果になる。

Strawberry Fieldを抜け出した一行はキャラバンでロードームービーさながらの旅をし、そこに犬まで紛れ込み(犬の独白はなかなかよかった)、後半はウクライナ出身のIrinaとAndriyの恋愛模様に話しが以降していくのだけれど、ふたりの物語りになると、今度はウクライナ同士の経済格差・文化格差まで現れる。ブルジョア出身のお嬢さんのIrinaと炭鉱で働く労働者の息子Andriy、ふたりはAndriyの夢見る楽園(?)Sheffield へ向かう。私が1ヶ月だけ居たことがあるSheffieldは今や廃れた大都市のはず(嫌な予感・・・) 旅の途中で出会うイギリス人は、Irinaがウクライナで夢見たロマンチックな英国紳士・淑女とはおよそかけ離れた不思議な人種たちだし、Sheffieldは当然夢の楽園ではない。移民の現実を描きながら、最後にたどりつく感想はといえば、豊かなはず経済大国の貧相な実態。これは本人自身もウクライナ移民の2世であるMarina Lewyckaの辛口イギリス批評なのか?それとも彼女なりの愛なのか?

「おっぱいとトラクター」よりも難しいテーマを選んじゃったから損しているんじゃないかと思うけど、Marina Lewyckaの文章は生き生きとしていて好きだなあ。移民同士のたどたどしい英語の会話は笑えるし、イギリスのコメディーの可笑しさはボケにこそあるんだと妙に納得する(かたやアメリカはつっこみ型だから私は好きになれないのね・・・)
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