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down the Rabbit Hole

たった70頁の小さな本。どこで発見したかというとたまたま覗いたGuardianのサイト。「Guardian First Book award」 (そもそもこの賞がどんな賞なのかよく知らない)のショートリストに残った本。毎日毎日丹念にGuardianの書評なんて読んでいないのに(だって記事が多すぎる)、何となく目に留まったのだから、これも運命というものだろう。本の解説にこんなことを書かれたら、状況が理解できず、ええ?って思うでしょ。このTochtliって子は一体何者なんだろう?

Tochtli lives in a palace. He loves hats, samurai, guillotines and dictionaries, and what he wants more than anything right now is a new pet for his private zoo: a pygmy hippopotamus from Liberia. But Tochtli is a child whose father is a drug baron on the verge of taking over a cartel, and Tochtli is growing up in a luxury hideout that he shares with hit men, dealers, and the odd corrupt politician or two.
Down the Rabbit HoleDown the Rabbit Hole
(2011/09/01)
Juan Pablo Villalobos

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1日で一気読み。子供が語り手になるという本は沢山あるけれど、彼が語るのはメキシコの闇の麻薬の世界。子供の語りだからそれは残酷なほど純粋、この残酷さが子供の純粋さ故の残酷さではなく、明らかに歪んでいるからぞっとする。そんなダークな世界が子供の口からポンポンといとも簡単に語られる。この子のガンや死体やギロチンやサムライへの執着、palaceと本人が呼んでいる館で、ほんの数人の大人だけに囲まれている閉ざされた、でも豪奢な暮らし、sordid, immaculate, enigmatic, patheticを連発する早熟さ(意味を理解しているわけではないんだろうけど)、 暇つぶしにプレステをやり、満たされない寂しさから(と思われる)よくお腹が痛くなる。ちなみに欲しくて仕方ないコビトカバはアフリカに生息する絶滅危惧種に指定されている稀少動物で(でも上野動物園にいるんだよね)、それを捕獲しにリベリアにも連れて行ってもらい、捕獲後はメキシコに密輸する計画。

一番ぞっとするのはやはりエンディングか。結局コビトカバはアフリカの港から密輸する直前に病気にかかり銃殺されるんだけど、ある日メキシコのTochtliの家に荷物が届き、その中には銃殺された雄雌2等のコビトカバの切り取られた頭の剥製が入っている。完璧なまでに素晴らしい職人技で仕上がっている2つの頭。捕獲したときにTochtliが既に名づけていた、ルイ16世(雄)とマリーアントワネット(雌)を寝室のベッドの壁にかけ、当座自分のコレクションの帽子の中から、サファリハットを被せてあげるのだけど、注文した金とダイヤモンドの王冠がまもなく届くから、そうしたらサファリハットは王冠に取って代わる。
On the day of the coronation, me and my dad will have a party.
これが本の最後の文章。何が怖いかというと、ギロチンに執着する少年が名づけた2頭のコビトカバの名前でもなく、ギロチンを想像させる切り取られた頭の剥製でもなく、実は、ここで初めてTochtliは父をdadと呼ぶ、それまで父はずっと名前(Yolcaut)で呼ばれている、つまり、少年は父と同じ闇の麻薬の世界に生きることを疑いもなく(もしかしたら喜びと誇りを持って)受容れるってことなのか・・・・

作者のJuan Pablo Villalobosはメキシコ生まれで現在はスペインに暮らしているらしい。これはデビュー作で、オリジナルはスペイン語だけれど、既に数ヶ国語に翻訳されていて、私が読んだのはその英語への翻訳版。発売はなんと今年の9月、でもAmazon Japanで在庫が既にあったから驚いた。英語版を出版したLondonの「And Other Stories」なる出版社は出来たてホヤホヤのなんか興味を引かれる小さな出版社。今後ちょっと注目。
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