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Utz

ここでは白旗を揚げたけれど、再度Bruce Chatwinに挑んでみる (邦訳は絶版で古本でも高い)。Chatwinって何が難しいんだろう?とつらつら思うに、マニヤックなところ、凝り性(よく言えばこだわりの強さ?)、Pedanticが決して悪い意味だけでもないとしたら、まさしくPedantic。彼は本当にイギリス人なんだろうか?と思うくらいイギリスらしくない。シニカルさ、鼻持ちならないところ、気取った言い回し、そんなものとは無縁の、世界のどこにでもふらりと出かけた彼らしく、自由で簡潔で、でも洗練され凛としている。「プラハの春」前後のプラハを舞台に、Kaspar Utzという名のマイセンのコレクターにして、謎多き男爵の不思議な物語。
Utz (Vintage classics)Utz (Vintage classics)
(1999/01/08)
Bruce Chatwin

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この本は127ページと短いのだけれど、とてもそんな短い話しだと思えないくらい深い。Utz男爵とMartaという名のメイドの関係、チェコスロバキアの弾圧の歴史、自由主義圏にコレクション共々逃れることが出来たはずのUtzは、そんな時代のプラハに留まり続ける。マイセン磁器に取り付かれた人生。そしてUtzの死後忽然と消えた彼の膨大なコレクションの行方、本当にUtzとMartaはその貴重なマイセンをすべて破棄してしまったのか?すべての謎は最後まで全く明かされないまま本は終わる。

美術品蒐集家の話しで、Chatwin本人もサザビーズの美術品鑑定をしていたから、この世界はきっと十八番だったのだろうと思っていたら、このUtz男爵は実在の人物だった。この本を原作として「マイセン幻影」というタイトルで映画化もされている。マイセン人形に魅入られた彼のコレクションは共産党政権のもと離散することを恐れて死の直前に自らの手で大半が壊されたといわれていたが、2001年に遺族によりコレクションが発見され2002年にサザビーズのオークションに出品された。Chatwinは1989年に48歳という若さで夭折しているけれど、その1年前にこの本が書かれているから、彼はこの事実は知らないで他界したはず。それなのにこの小説が書けたのか?Chatwinはすべて知っていて、でも本の中では何も語らず、わざと謎を残したまま旅立ってしまったんじゃないかと私は勝手に確信した。でなければ、こんな美しい話しを書けるはずがない。

相変わらずわからないところだらけのChatwinだったけれど、これほどわからなくてこれほど感動した本も初めて。そんな自分も不思議だけど、そんな不思議な世界を味わえる本というものもまた不思議。謎が何も解決しないままなのに、何の違和感も不完全燃焼感もなく、そして読書後は澄み切っている。いい本でした。
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コメント

[C152] 美しいって・・・

Comment Wang-fo fut sauve よりも美しい?

と嫉妬して、買ってみることにした。
  • 2011-12-20 23:51
  • さかい@tadoku.org
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[C153] 読んでみてからのお楽しみ

Comment Wang-fo fut sauve の方がそりゃあ美しいですよ・・・
と更に嫉妬させていみる。でも読書後の清涼感(?)はUtzの勝ちだね。

感想お待ちしてます。
  • 2011-12-21 01:42
  • Green
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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