映画にもなったし、タイトルは聞いたことがあったけど、なんとイタリアで100万部を超えた大ベストセラーらしい。イタリアマフィアといえばGod Fartherから未だ抜け出せない私は、そもそもカモーラって何?から始まるんだけれど、家族の絆の強いシチリアマフィア、コルレオーネ家(God Fartherね)とは全然違う、経済と政治を牛耳り、組織力とオペレーション能力に長け、資本主義の隙間をついた企業マフィアを描くノンフィクション。作者は実際にマフィアに狙われ暗殺されそうになったとか・・・ しかし、いくらGod Fartherが好きでも、ちょっと私には辛かった本 (これでまたノンフィクションが嫌いになる)。読みにくいし登場人物は多いし、南イタリアに行きたくないと思わせるほどのインパクトもなし。
出だしがいきないナポリ港に陸揚げされるコンテナから出てくる死体。これはまあ、いい。続いて世界を制するイタリアファッションブランドもこのマフィアなくしては成り立たないというあたりも、さもありなん。。。さてそこからが問題。小説じゃないから登場人物にキャラを持たせて構成することは出来ないだろうけど、次から次へとカタカナでイタリア人の名前を列挙されても誰が誰だかもうどうでもよくなる(一体何人の人間がこの本に登場したのか?)。殺されたヒトはすっごい大物なのか、どれだけショッキングなことなのか?(まあ、途中からあっちでもこっちでも人が殺されるからどうでもよくなるけど)。本の構成も、トピックの寄せ集め的で、趣旨に沿った理論だてた構成があってもよかろうに。カモーラへの潜入ルポだけど、政治や経済、警察、司法機構の説明がないから、このカモーラの全体像がよくわからない。さらにこれはオリジナルがそういう文体なのか、翻訳のためなのかは不明だけど、妙に文学的な描写(ネッチョリしてるんだなあ、これが)にかえって興醒め。何がどうしてどうなったのかわからないのは、私の読解力は棚上げし、人に読ませる文章を書いとくれ!と叫びたくなる。
投げ本にしてやろうかと思いながら、全部読んだ私はエライのかエラくないのか?これならフィクションでドラマチックなGod Fartherの方が断然マフィアの怖さが身に染みるってもんだ。
ここで終わると面白くないので、調査開始。
● さてイタリアでミリオンセラーというなら、Amazon Italyでレビューを見てみよう。
驚くことにレビューはたったの5件。5つ星が4つと、4つ星が1つ (もちろんレビュー内容はわからない)。平均すると4.8の高得点ながら、ミリオンセラーはAmazon外で売れたのか、それともイタリアでAmazonは人気がないのか、そもそもイタリア人はレビューなんて面倒だから書かないのか?そっちに興味を引かれる。
● 仕方なくAmazon UKに行ってみる。
こちらは41ものレビューがある(さすがだね)。1つ星から5つ星まで賛否両論、平均で3.5。高得点レビューは内容のショッキングさもさることながら、サヴィアーノの体当たり取材の勇気を称える声が多い。さて1つ星も4件あり、”読みにくい” ”人名、地名が多すぎ” ”文学的表現が嫌い” ”意味不明”と、あ~英語もですか・・・と笑ってしまう。
● ちなみにAmazon jpは一番評価が低くて平均星2.6。 ”読みずらい” のオンパレード (私もそれに一票!)
これを読んで社会の底辺で蠢く悪や犯罪をどーのこーのと言える人は、読んだ気になっているだけで、実際には読んじゃいなくて一般論を語っているだけじゃないかと、読解力のない私は思う。
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それにしてもこの書評も小気味よい。
辰年に脱兎の如く跳び出した緑の兎の行く先を見守ります。
julieさん、22日、どーお?