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最後の日々

グダグダとこちらで能書きを言っているが、結局『レーモン・クノー コレクション』を買っている。これは第4刊。第3刊はこちら。1936年刊行のこの本は、クノーの自伝的作品と言われる彼の3番目の作品。若い頃の作品で確かに若々しいけれど、生気に満ち溢れているってことでもない。『文体練習』や『イカロスの飛行』 『地下鉄のザジ』など後期の作品ばかりを読んでいたから、生身が見える感じは若々しいけれど、クノーがソルボンヌで哲学を学んでいたい頃の、ストーリーも時代背景も暗い青春の話し。
最後の日々 (レーモン・クノー・コレクション)最後の日々 (レーモン・クノー・コレクション)
(2011/12)
レーモン クノー

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テュクデンヌが主人公だとすれば、クノーが自身を被せた人物なんだろう。哲学科で学ぶ、暗く冴えない学生、本を読み漁り、煮えきらず、悶々と過ごす日々、成績はさして芳しからず。周りを囲む彼の友人たち、そしてこちらも冴えない老人たち。哲学と書物で頭でっかちになった若者の青春最後の日々と、人生最後のあがきと後悔でもがく老人たち。自伝的作品と言いながら、独りよがりでないところがいい。アマチュア数学者でもあり、ガリマール社で編集もしていた彼は、どこか醒めているというか、大勢を眺める客観性があったんだろう。当時の出来事や世界情勢、パリの風景もほとんどが実際のものらしい。科学の常識を覆す相対性理論の発表、シュルレアリスム運動、大戦後の荒廃したドイツ、ロシア革命に感化されたフランスのプロレタリア運動、等々、1920年代のパリのカフェやブラッセリー、郊外へ向かう電車、セーヌ川岸の古本屋と、パリの匂い(臭い?)もプンプンする。熱血的に登場人物と歴史を関わらせてはいないけれど、クノーはこの激動の時代に登場人物たちをフレームインさせて、大勢の中の個が知らず知らず見えてくる。

主人公を完全に喰っているのは、口ばっかりの小物詐欺師ブラッバン老人。一攫千金の大博打でドイツ不動産へ投資するが、大戦後ドイツマルクは紙屑になり、哀れな最期と遂げる。一度も旅をしたことのない地理教師として自分を責めるトリュ。資産家の老人や現実的な学友。そしてこの本の裏の主人公(だと思える)アルフレッド。星占いと統計学原理で未来をすべて予見できるカフェで働く青年。章の合間合間に彼の独白を挟み、本の最後を飾るのも彼の独白。誰に加担するでもなく徒党を組むこともなく、他人に依存することもなく、常に傍観者目線。テュクデンヌが当時のクノー自身だとしたら、アルフレッドはこの本を書いているときのクノー自身の代弁者のよう。本の最後は彼の独白で終わる(ネタばれにはならないことを祈る)。3回噛み締めるように読んだけれどわからない、でも哀しい独白。

・・・こうしてすべては永遠にめぐり続けるのかと思われるかもしれません、・・・・しかし季節や年は言うにおよばず、昼や夜までもなくなる時、星々が回転を完了し、さまざまな現象が周期をもはや持たなくなり、すべてが存在することをやめる時がくるでしょう。宇宙全体が、その運命を完結して消え去るでしょう、今ここで人間たちの運命が完結するように。

さて、こちらで本年のブログは終了します。年越本をバッグに詰めて、明日から実家に戻りおせち料理作りと大掃除に大忙し。。。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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