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Cuts

David Lodgeが気に入ったならこれは?ということでお薦めいただいたので早速。可笑しさはやっぱりDavid Lodgeの方が好きだったけど、一気に読める面白さはある。
CutsCuts
(1988/11/01)
Malcolm Bradbury

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舞台は1986年夏、イギリス北部の街。時代はサッチャー政権、至るところでCUTが流行。財政削減、公的サービスの削減、その他調子にのってありとあらゆるものがCUTされる。情けないほどパッとしない、こんな地味な人、イギリスの田舎ならいるだろうなあ、という文学青年は細々と講師を務めながら暮らしている。がひょんなことから、テレビ局のドラマのWriterに抜擢され、その180度違う世界に巻き込まれる。そのしがない文学青年Henry Babbacombeに対するは、彼を抜擢(?)したEldorado Television。そこの Board of Chairman、Load Mellowは、最後の浮かれ騒ぎ、やりたい放題を満喫するKingといった役どころなんだけど、彼がhigh quality dramaを作りた~~い、と言い出したところからドタバタが始まる。

「ランダム・ハウス英和辞典で50項目にものぼる複雑多岐な用法をもつ〈CUT〉という言葉を曲芸的に駆使し・・・」 という解説がAmazonにあったのだけど、なんのこっちゃ?と思いながら読み始めたらわかった。あ~そういうことね。この本、とにかくCUTという単語がやたら出てくる。経費やコストのCUTから始まり、ドラマ撮影で使用される色んなCUT、あまりにも沢山CUTが出てきたので覚えていられないけど、とにかくしつこく繰り返されるCUT。
Chapter 1は4ページ強だけど、それはこうして始まる。
It was the summer 1986, and everywhere there were cuts.
それから延々とどこで何がCUTされるかが書かれた揚句(最後の方はもうジョークだね)、
And that, more or less, was how it was over that particular summer, the summer of the cuts.
でChapter1は終わり、ドタバタ劇が始まる。実はCUTという単語だけでなく、この本の可笑しいところは繰り返しのしつこさ。あ~~もういい、と言いたくなるけどそれでもしつこく繰り返される言い回し、単語、表現、その、あ~~もういい、を超えても続くしつこさに根負けし、とうとう笑ってしまう・・・という策略。

ドタバタコメディーだけあって、冴えないHenry君もとぼけながらも、馬鹿ばかしいテレビ局のドラマ作りを何となく理解し、馴染んで上手いことやっていて、我侭し放題のLoad Mellowの部下たちも、彼の暴言に一喜一憂し、振り回されているように見えるけど、どこか余裕をかまして楽しんで見えるから、誰も不幸な人がいない。Thatcherismに対する批判や風刺なんだけど、寒々とした批判でなくて、皮肉の中にもユーモアがある辺りがイギリスで、庶民が実際に笑い飛ばしたかどうかはわからないけれど、馬鹿馬鹿しいから笑っちゃえ!みたいなノリは余裕と呼んでもいいんじゃない?

ところで、50項目にものぼる複雑多岐な用法をもつ〈CUT〉っていうけど、複雑多岐と言われても、CUTはCUTでしょ、というのが私の感想。翻訳しろと言われたら、50個の日本語を列挙しなけりゃならないかもしれないけれど、複雑?多岐?CUTはやっぱりCUTだよ。。。
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コメント

[C181] これ読んでないです・・・

今度貸してください、って、いつ読む時間があるの?
  • 2012-01-09 01:18
  • さかい@tadoku.org
  • URL
  • 編集

[C182] お持ちします

Malcolm Bradburyの小説って意外に探すのが大変で、驚いたのは邦訳されているのは、このCUTSと
「My Strange Quest for Mensonge (超哲学者マンソンジュ氏)」なんと柴田元幸訳
という2冊しかないようで、英語に直接飛ぶと、書評なのか編纂しただけなのか、自身の小説なのか調べるのが面倒になって、とりあえずこれから手をだしてみました。超哲学者マンソンジュ氏は評判のいいようで、古本だと500~600円で買えちゃうので(はっきり言って英語のPBより安い)、日本語で読むのはどうだろう?それは自虐的?でも柴田訳だから、翻訳も悪くないんじゃないか?なんて考えてました。

あと「The History Man」と「Eating People is Wrong」はどうなんでしょう?

Cutsは今月の蘊蓄で持って行きますよ。
  • 2012-01-09 11:36
  • Green
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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