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ブーベ氏の埋葬

祝・新規訪問のご祝儀はこの本。セーヌ河畔の古本屋が立ち並ぶ(今でもあるの?)セピア色の風景がなんとも素敵。日本の単行本には少ないちょっと小振りサイズのソフトカバー(私の好きなタイプ)。無愛想な親父から買ったというおまけもつき、ちょっと期待させてくれるなあ。
ブーベ氏の埋葬 【シムノン本格小説選】ブーベ氏の埋葬 【シムノン本格小説選】
(2010/12/21)
ジョルジュ・シムノン

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Georges Simenonって人は「メグレ警視シリーズ」が有名だけど、相当に多作の人だったらしく、最高時には月1本、ペースが落ちたといっても年2~3本、生涯で300点以上の作品を残したというから、ギネス記録を持っているんじゃないかと思う程の驚異的な創作ペース。なのに純文学も書きたいということで、そちらの評価も高い。これだけ多作だと、今で言うところの本屋で平積みされるベストセラー作家、所謂職業作家といっていいだろうけど、量産出来る作家ってやっぱり上手いんだろうなと思う。  

第二次世界大戦直後のパリ、八月のある朝、セーヌ河の河岸通りの古本屋で版画集を眺めていたブーベ氏が急死する。七十六歳のブーベ氏は近くのトゥルネル河岸通りのアパルトマンで周囲の人に慕われながら慎ましい暮らしをしており、身よりもいないと言われていた。ところが、偶然のことで新聞に載った故人の写真から、複数の人間が身内だと名乗って警察に現れる。関わりがあったという何人もの女も現れる。そのそれぞれが、謎と矛盾に満ちた、脈絡のないブーベ氏の前歴を証言する。そして次第に戦前・戦中の暗黒の世界があぶり出されてくる。果たしてブーベ氏とはいったい何者なのか。

と、粗筋は全部本からのパクリでご容赦を・・・
メグレ警視シリーズを書いているだけあって、サスペンスタッチのストーリーは十八番なんだろうけど、それだけだと大衆小説みたいになっちゃう。そこで終わらない理由は、ブーベ氏を取り巻く人々の描き方が上手いからなんだろう。途中までそのブーベ氏って一体何者なのか?という興味でワクワクさせておきながら、でも衝撃的で奇抜なエンディングではなく、ある意味普通。でも後味がいいのは、パリの風俗や人情といった古きよき時代の雰囲気と、ブルジョワではない貧しい庶民の暖かさが最後に残るところ。《教授》というあだ名の浮浪者と、警察のムッシュ・ボーペールの噛み合わない会話に、ブーベ氏が波乱の人生から逃避して自由になりたかった思いが垣間見えてちょっとジ~ンとくる。

Georges Simenon、お初だったけれどまた読んでみよう。エンタテイメント性と純文学的なところと、適度な軽さと重さ(?)のバランスがいい。ま、難点といえば、翻訳がちょっとね・・・ (と小さな声で言っておこう)
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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