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キャンバス

以前に 「螺旋」 という本を読んで、このスペインの新星を知った。その本がデビュー作というSantiago Pajaresは1979年生まれ、若干25歳で書いた「螺旋」で若手作家の有望株に躍り出てしまった。別に、ひとり「スペインウィーク」をしようと思っているわけじゃないけれど、「仔羊の頭」からいきなり若干30代の若手作家だから、少なくとも日本で刊行されているスペイン文学は、やっぱり戦後文学がすっぽり抜けている感じ。
キャンバスキャンバス
(2011/12/20)
サンティアーゴ ・パハーレス

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偉大な老画家エルネスト・スーニガは、自身の代表作 「灰色の灰」 を完成から30年を経て売りに出す。それは巨額の落札価格でプラド美術館の手に落ちるが、その公開レセプションで突如その欠点に気づき、「ここを修正しなければいかん」と凄まじい執念を見せ、息子に絵を盗めと言い出す。作品を所蔵する美術館からは相手にされず、息子も協力しない。人間嫌いのエルネストのこの途方もない願いをかなえてやろうと協力したのは、彼の恩師で友人の贋作者ベニートと絵画専門の怪盗ビクトル。偉大過ぎる天才画家を父に持ち、画家の道をあきらめ、常に屈折感を味わい、父と上手くいかない息子のフアン、父と息子を繋ぎとめていた若くして他界する母、気難しい夫の父と折り合いが悪いフアンの妻。画家自身が自分の作品を盗み出すという世紀の大盗難計画の最後は、絵を取り巻くこれらの人々と、父と息子と亡くなった母親の家族の愛の物語として昇華する。フアンが子供だった頃絵に施した小さな悪戯や、アトリエのデッサン、母のヨーグルト嫌いの話し、何十年も近所のスーパーで働き続けるレジ係の女性など、小さなエピソードを伏線に散りばめ、天才画家には芸術論を語らせ、300ページもない物語にかなりの要素を詰め込んだ感じだけれど、きれいにまとまっているから構成は上手。

いわゆる現代文学で、ミステリー仕立てになっているから一気読み出来るハラハラドキドキ本だけれど、どんでん返しのトリックやオチが決め技ではない。「螺旋」もそうだったけれど帯がいつも ”ミステリー” を匂わせる煽り方で、でも彼はストーリーテラーで、描いているのは人間の愛情で、最後はハッピーエンドとは違う暖かい余韻を残すタイプ。でもまだ ”上手いね・・・” 止まりで衝撃度は大きくないし、ややロマンチック過ぎるエンディングと凝った構成に、ちょっとやり過ぎ感と青臭さが感じられる (と、もう若くはない私なんかは、その一歩手前で抑えてもいいんじゃない?と思っちゃう)。むしろ今後に期待したい作家なので、翻訳が木村榮一さんということで、是非木村氏に育てていただきたい新星スペイン作家。
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コメント

[C217] そろそろ

自分で小説を書いてもいいんじゃないか?
自分が一番読みたい物語を・・・

あなたに偏執狂なところがあれば書けると思うな。
  • 2012-02-27 10:33
  • さかい@tadoku.org
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[C218] 私はなんにつけ・・・

それは子供の頃から思っていた。私はCreator ではなく Arranger。

無から何かを作り出すのではなく、何かを編集したり構成しなおしたり、ちょいと付け加えたり削ったりさせた方が上手い。ホラ、小説家が必ずしもよい批評家にはなれないし、すっごい批評家がよい小説を書けるというものではない。だから、翻訳っていいところついているでしょ??
  • 2012-02-28 00:55
  • Green
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Author:Green
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