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ルイユから遠くはなれて

「最後の日々」 を読んで一息ついている場合ではない。これは1月発売になったレーモン・クノー・コレクション。その次、2月にも「きびしい冬」というのが既に発売されている。
ルイユから遠くはなれて (レーモン・クノー・コレクション)ルイユから遠くはなれて (レーモン・クノー・コレクション)
(2012/02)
レーモン クノー

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「パリから少し遠く、少し近い郊外の町ルイユで、靴下工場を経営する父のもと育てられた想像力豊かなジャック少年。自分が、シラミが原因かもしれない謎の病「存在病」にかかった貴族詩人デ・シガールと母との不義の子供であり、自らが貴族であることを疑わない彼は、白昼夢のなかで、さまざま英雄になりかわる。しかし、大人となり、故郷を飛び出した彼の人生に待っていたものとは・・・。」

と、面倒なあらすじは帯から拝借。
その白昼夢ばっかりみているジャック少年がなりたかったのは、ボクシングの世界チャンピオンに、ローマ教皇に医者、とこの辺はいいとして、水晶玉占い師、黄金探索者、英国貴族、高位ラマ僧、巨大シラミの研究者・・・場面も飛ぶし、発想も奇想天外だし、ジャックの夢と現実が交錯してよくわからないところもあるけれど、そんなジャック少年が大人になり、町を飛び出し、旅芸人の端役に加わったり、恋愛もして失恋もして、すべてを失い挫折する。「なれたかもしれない自分」の夢想と現実の交錯。滑稽と言えば滑稽な喜劇。顔の右側は笑うけど、左側は痛い、みたいな喜劇。夢ばっかりみているジャックがある時、一切の白昼夢との断絶を決心するあたりはたしかにちょっと痛い。

最終場面は突如現れる。ジャックの妻と息子がジャックの故郷ルイユの両親を訪ね、ジャックとは別れたけれど、家に置いてくれと頼み4人は一緒に暮らし始める。ある日「存在病」にかかった詩人、デ・シガールが ”面白い記事がありましたよ!” と読んで聞かせるのが、アメリカに渡って大成功したジェームズ・チャリティーなる映画俳優のインタビュー記事。これって、ジャックじゃない!と誰もが気付くのに、すっとぼけたジャックの両親とジャックの元妻は気付かない。そしてデ・シガールとジャックの息子、ミシューは、ジェームズ・チャリティー主演の映画を見に行く。映画はジェームズ・チャリティーと今は名乗るジャックの人生、それも相変わらずの白昼夢ぶりの奇想天外な映画。映画が終わり 「よかった」 と言うミシュー。なんだ、大団円だったんだ、この話し・・・

クノーだから、哲学の参照も言葉遊戯もふんだんにあるけれど、それは「あとがき」の解説で勉強させていただいた。それにしてもこの小説、モチーフがシラミ、しつこいくらいに登場するシラミ。これも解説によれば (というのか、原文フランス語ならば) ちゃんと役割を持たされたシラミで、”どうあっても知的もしくは詩的な昇華を受けつけない余計物であり、それだけに真面目な哲学的主題をアイロニに突きはなして、物語を喜劇のほうへと振る・・・” のがシラミらしい。

さらに続くぞ、レーモン・クノー・コレクション。
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流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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