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ロシア短篇集

Amazonでは売っていない・・・こんなことは初めてだ。仕方ないので版元の国書刊行会のHPを紹介。

ロシア短篇集 バベルの図書館16
ロシア短篇集  あ、紀伊国屋 でも買えました。興味がある方はお早めに!

「バベルの図書館」にロシア文学はちょっと意外な感じ、それも大御所の3篇。このシリーズじゃなかったら、100年後にも読んだとは思えない。あのボルヘスが序文でどんな風に紹介して、そしてこのロシアの巨匠たちの何にそれほど感銘を受けたのか?手にした理由はそれだけ(といえば、それだけ)。

「鰐」 ドストエフスキー
うっかり見世物小屋の鰐に飲み込まれ、当の本人は鰐の腹の中でピンピンとし、妻や友人には鰐の腹の中がどんなものかを語り (ちなみに空洞で胃の壁はゴムのようらしい)、鰐の腹にいることを出張扱いにして手当てがもらえないかとか、果ては世界を変えてやる、くらいの壮大な計画を立てる男の話し。てんで頓珍漢な妻に、ベタベタ官僚主義の上司は、”そんな前例はない・・・” を連発する。登場人物は皆、在り得ない程のナンセンスな行動をとるけれど、大笑いは出来ないグロテスクさが漂う。どうもユーモア小説とも言われるらしいけど(確かに可笑しい)、私は、これはもう、カフカだね・・・と言いたい。

「ラザロ」 アンドレーエフ
墓から甦った男の話し。その恐怖の眼差しで会う人全てを悉く不幸にし、ついには皇帝アウグストゥスと謁見し、焼けた鉄でその眼を焼け出され、2度目の生涯を終える。あ~~怖かった、にもかかわらず、この話しが一番気に入っていたりするのだが・・・

「イヴァン・イリイチの死」 トルストイ
高い給料や瀟洒な家具に囲まれた屋敷や、社会的ステータスから得られる虚栄心等々、俗物的な喜びが全てだと信じて疑わない司法官僚のエリートが、ある日体の不調から突如死に直面し、自己と社会を内省する過程を経て、死に至る。誰にでもどこにでもありそうなそんな俗物的な虚栄心のテンコ盛りのような人物は、直接我が身に跳ね返ってくるような心地悪さ。そんな外見だけを取り繕う嘘に気付く彼が死の直前に見たものは、死ではなかった。 「死の代わりに光があった。」 これに、ボルヘスの言う、神学的な ”恩寵による救済” と言われても実は私にはピンと来ない。

背景は19世紀ロマノフ王朝期。貧富の差、硬直的な官僚主義、ロシアの古典文学をそういうフィルターを通してみると、ただの堅苦しい古典になってしまうんじゃないかと思うけど、3篇ともに共通するのは「死」で、その裏返しが「生」で、その「生」の姿や意味は古今東西あまり変わらない。もっと言えば、帝政ロシアの官僚主義や形式主義、見た目を取り繕う嘘に囲まれた暮らしも、あまりにも今の時代とかぶる。

馴染みのないロシア文学は意図していなかったけれど、これにて当ブログ200本目の記事完了
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[C231] 200本!

何とも言えない・・・ 200本・・・
  • 2012-03-20 14:39
  • さかい@tadoku.org
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[C232] ウン十年の多読に比べたら

どうということはなかった、200本。
でも慣れてきて、およそどんなもんかわかるとすぐ飽きる私の性格からして、きっと2年、3年と続けることの方が大変なんだろうなあ。。。(そんときゃ、躊躇無くブログは冬眠させます)

  • 2012-03-21 20:46
  • Green
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