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きびしい冬

しつこくレーモン・クノー・コレクション。これくらいの薄さならほぼ定価でも (出版したばかりの本だけど、ちょっとだけ安くなっていた古本を見つけた!) 買ってあげられるし、構えずに読み始められる。
きびしい冬 (レーモン・クノー・コレクション)きびしい冬 (レーモン・クノー・コレクション)
(2012/02)
レーモン クノー

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舞台はクノーの生まれ故郷ル・アーブル。時は第一次世界大戦。主人公のルアモーは33歳で、名誉負傷の軍人として情報部門で働いている。二十歳の時に町で起こった悲劇的な火災で、身ごもっていた妻を失くしている。そんな彼の一冬の物語。母国フランスに対してシニカルで、批判的で、戦局を悲観的にしかとらえられず、心に大きな空虚を抱えて淡々と日々を過ごしているルアモー。ある日たまたま乗ったバスの中で、ふたりのかわいい姉弟と出会う。姉の方は、生きていたら自分の子供と同い年であった13歳のアネット。兄嫁、古本屋の女主人に憧れ(でも態度は反抗的)、美しいイギリス人女性に恋をし(と自分では思っている)、その冬が終わる頃、少女アネットと婚約すると宣言し、怪我は癒え再び戦場に赴く。

「ぼくの生命、ぼくの生命、ぼくの生命」 とベルナールがアネットに囁き、
「外はこの冬いちばんの寒さだった。」
で物語が閉じる。

さらさらと読めたけど、すんなりとは完結しなかった。クノーと言えば、言葉遊びをしているような実験的小説を書いてみたり、どこか斜に構えたような皮肉めいた可笑しさとか・・・ この「きびしい冬」はそれを思うとなんともまともな小説。でも私は最後の美しいエンディングに戸惑い、3回読み返して今もまだわからない。これは彼の再生を象徴するエンディングなのか、哀しい未来を予感させるエンディングなのか、そもそも空虚な心を満たした13歳のアネットの愛の光が、どうして「ぼくの命」にまで昇華するのか?

九章の出だしが一番好きだった。

海は最初の日と同じだった。空模様は冬、天文学上はまだ秋だが、それはもう終わりかけの、こわばって無感覚になった、抜け殻のような秋だった。

”こわばって無感覚になった抜け殻” これはわかる、これはルアモーそのもの・・・
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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