FC2ブログ

Entries

無慈悲な昼食

今年2月に出たばかりのほぼ新刊ながら、このタイトルと表紙の無気味な絵がどうにも気になる。”騙されるんだろうなあ” と覚悟の上、ポチってみる。久しぶりのラテンアメリカはコロンビアの作家。騙されるどころかかなりの大当たり。”ガルシア=マルケスの再来との呼び声が高い” らしいけれど、いや、ガルシア=マルケスとはちと違うけど、リズミカルで無駄がなく、ドタバタものながらラテンアメリカらしからぬ(?)洗練された文章。
無慈悲な昼食無慈悲な昼食
(2012/02/14)
エベリオ・ロセーロ

商品詳細を見る
コロンビアはボコタの教会。ここでは曜日ごとに地区の人々に「慈悲の昼食」を施している。月曜日は娼婦の日、火曜日は不良の日、水曜日は盲人の日、木曜日は老人の日、金曜日は母子の日と定め、教会が無料で昼食をふるまう。話しは、木曜日「老人の日」の「慈悲の昼食」時からの24時間を描く。登場人物は教会の面々だが、神に身を捧げる純な聖職者はひとりもいない。アルミダ神父は献金を横領しているし、賄い人の3人の老婆たちは怪物みたいだし、生まれた時から教会で暮らす聖具室つきの女サビーナはあふれる性欲を、これまた生まれた時から教会で暮らす、主人公のせむし男、タルクンドに向ける。そのタルクンドは「慈悲の昼食」の給仕係りで、特に「老人の日」の老人たちの節操のない無茶苦茶ぶりにうんざりし、それでも皆が表面的には神に仕える「良き人」を演じている。が、ここに突然、とんでも神父、大酒飲みで、歌いながら説教をするマタモーロス神父が登場し、皆が本性をむき出しにして大騒ぎが始まる。

さらりとしか書かれていないけれど、サビーナもタルクンドも教会に拾われた孤児で、三人の老婆も内戦で夫も家族も失い、教会に拾われた女たち。聖職者のお面をかぶった俗物のアルミダ神父を通して、コロンビアの内戦に傷ついた貧しい人たちと、教会への批判がわかる。大酒飲みのとんでも神父マタモーロスは、一見俗物のような神父だけれど、実はまともな人間である彼の登場をきっかけに (でも彼は歌って踊って飲んでいるだけ)、嘘だらけの偽善が剥ぎ取られる。金と性欲と酒。実は重たいコロンビアの情勢とそこに生きる弱者を描きながら、最終局面での破綻ぶりをどこか明るく描くのは、さすがのラテンアメリカで、「老人の日」にタダ飯にありつこうと教会にやってくる老人たちが、貪欲なまでにサービスと食べ物を求め、死んだふりをしてまで料理をほおばり続ける姿は、マジックリアリズムを感じさせるけど、Evelio Roseroは1958年生まれの「ポスト・ラテンアメリカブーム」の世代で、旧世代と比較するとスマート感がある。

なかなか面白かったので、もう1冊邦訳されていた 「顔のない軍隊」 というのを早々にポチってしまった。こちらの表紙もなかなか素敵で楽しみ。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/224-0dc5d0be

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 78
9 10 11 12 13 1415
16 17 18 19 20 2122
23 24 25 26 27 2829
30 31 - - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア