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選ばれた女<2>

さて、第2巻。ふぅ~、長かった、重かった(本が・・・)、そして凄まじかった。
選ばれた女〈2〉 (文学の冒険シリーズ)選ばれた女〈2〉 (文学の冒険シリーズ)
(2006/09)
アルベール コーエン

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1930年代、ヨーロッパではナチスが台頭し、アンチユダヤ人の空気に包まれる。ユダヤの血を引く国連事務次長(国連ナンバー2)ソラルは同胞の救済に動くが失敗し、それが原因、というよりこれ幸いとばかりに利用され、国連を追放され、フランス国籍も剥奪される。その事実を明かさぬまま、彼は部下の妻、貴族の娘アリアーヌと共に、一見優雅な逃避行へ。ソラルへの愛(と言う名の甘美な誘惑?)しか見えないアリアーヌ。最初は、世紀の逃避行に酔いしれたふたりだったが、常に一緒にいること、お互い同士しかいないこと、そして職を奪われた無国籍のソラルは働くことも出来ず、お互いの過去を語りつくした後は何もすることがなく、外部との接触を一切遮断したふたりには、現在も未来もない。ソラルはそれに気付くが、アリアーヌは無意識下では感じているその退屈さに気付かず、必死にソラルへの愛にしがみ付き、かくも愚かで低俗な女に成り下がっていく。それを憎み、軽蔑し、でもアリアーヌを愛したいと願うソラル。それはもう地獄でふたりは滑稽なまでに馬鹿馬鹿しい演技を繰り返し、様々な狂態を演じることになる。揚句にソラルは、アリアーヌに昔の男のことをねちねち詮索し、自ら嫉妬を掻き立て、自身の肉体を傷つけ、狂人と化していく。狂気の果てまで到達しようがもうお互いしかいない二人は、再び倦怠の中に埋もれるが、それはもうある種のやりつくした感で、心中して果てるという結末に辿りついた時には、思わずホッとしてしまう私。

二面性、両面性、という対比もこの話しが面白い理由。愛と憎、美的なものとグロテスクなもの、リリカルとシニカル、崇高さと低俗さ、そしてソラルは常に、自分の中にふたりのソラルを抱えて生きているように見える。彼のモノローグは、ソラルがもう一人のソラルを語るような二面性がある。ユダヤ人という運命を呪いつつ逃れられない精神葛藤は、アルベール・コーエンの人生をなぞりながら、自身の体験もおそらく混じっているはず。上流社会のユダヤ排斥運動、見てくれを取り繕う偽善が蔓延する彼らの世界で、いとも簡単にアンチユダヤ思想が浸透していく様は、ゲットーや収容所の話しと同じくらい怖い。

しかし小市民の私の下世話でささやかな疑問は、3年近くにも及ぶふたりの逃避行で、パリのリッツ等々の高級ホテルでの贅沢な日常を支えた、無職のふたりの金づるが何なのかが気になって仕方ない。加えて、アリアーヌに去られた後、惨めで情けない彼女の夫は自殺を図るし、結局馬鹿な低俗女だと思っていたアリアーヌよりソラルの方が最後は破綻して見えるから、女ってしたたかで最後は生き残るんだ・・・ と恐ろしくなる。アリアーヌもソラルも、お互いを本当に愛していたのかと最後はそんなことを思いながら、結局一番相手を思いやっていたのは、この愚鈍で冴えないアリアーヌの夫なんじゃないかとそんなことまで考えた(と、そんなことを描くためにこの本は書かれたわけじゃあ、ないんだけど)。

それにしてもお腹一杯の気分。
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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