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ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語~ポオ小説全集2

本のタイトルは「ポオ小説全集2」で、この「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」はその中の1つ。でも小説全集で括ってしまうのはあまりに失礼。この本短篇集かと思いきや、「ナンタケット島出身・・・・」は270ページもあるポオの作品の中では一番長い話しなのだそう。
ポオ小説全集 2 (創元推理文庫 522-2)ポオ小説全集 2 (創元推理文庫 522-2)
(1974/06)
エドガー・アラン・ポオ

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ポオは短編作家だと勝手に決め込んでいたから、この長さにも驚いたけれど、それよりも短篇作家とはとても思えない、くどい(笑)詳細な描写。ポオの状況説明の細かさは単に丁寧とか詳細とかというレベルではなくて、偏執狂的といってもいいくらいで、ストーリー展開だけ考えたらバッサリと切っても大丈夫、と思えるくらいの尋常でないくどさ。最初はこの細かさに着いていけない、と挫折しそうになった。これって現代小説ばっかり読んでいる弊害か?今時の話し、特にベストセラーに名を連ねるような本は、長いと読んでもらえないし、スピード感があってテンポがよくないと投げ出されてしまうし・・・ 途中から、いや違う、と気付く、そして最後には、いや、これがあるから良かったんだ、と納得させられた。

粗筋はと言えば、主人公アーサー・ゴードン・ピムが密航した捕鯨船で船員の反乱が起こり、更に暴風雨に遭遇して遭難、漂流する。生き残ったピムらはジェイン号に救出されたものの、そのまま南極探検に向かうことになる。しかし船員たちは辿り着いたある島で、そこの原住民によって全滅させられる。からくも脱出したピムは、南の果てで不思議なものを目撃する。

話しが俄然幻想的に(非現実的に?)なっていくのは、後半の遭難後の漂流当たりから。喰い物と水がろくにない漂流生活でどう生き延びるか、生き残った4人は結局くじ引きで死んでいただく人をひとり選び出し、その人肉を喰らう。海の上の漂流生活で雨水をどう確保するか?とか、乾ききった喉に酒は役に立たず、海に飛び込んで浸かっている方がまだましだとか、ピムの親友が壊疽をおこして死んでいく様とか、ポオがその場にいて、経験した話しじゃないとしたら、こんな描写をどうやって書けたんだろう?さらに、南極に対する蘊蓄(ストーリー的には全然、無くても大丈夫)に、原住民たちが住む島の不思議な洞窟や地形の話し。そしてそして、おんぼろのカヌーで辛くも島を脱出したピムともう一人が向かう、南の更に南の(そこって南極のはず・・・)海の情景。水蒸気の白い幕(って何??)、不思議な鳥たちや海洋生物(?!)に、一緒に脱出した原住民が白いものに脅える意味、この当たりは一体何をどうやって想像すればいいのだか・・・(でも、頑張って想像してみる) カヌーでの漂流では生き残り組たちの精神状況もまともではなく、ストーリーは、短い航海日誌のようになるくせに、状況はどんどん摩訶不思議さが増していく (南極近辺なのに、寒くないのはどうしてだろう?)。

極めつけは、最後の『ノート』。これはピム氏でもポオでもない人物が、ピム氏の突然の自殺を告げ、白い水蒸気の巨大な割れ目にカヌーが吸い込まれたところでぷっつりと途切れる話しの続きがないことを説明する。あれ?これって、Riddle Story ってやつじゃないだろうか?つまり、結局はピムはその南の海から生還し、原住民が脅える白の意味を知り、そしてこの世のものでない程の経験を引きずりながら、残りの人生を暮らすも、何らかの極度のショックに耐えられず、結局自殺を図るってこと?、と私に勝手に想像させるという寸法。あんなにもくどくどと描写を連ねたくせに、最後のクライマックスの素っ気無さ。くどさが尋常じゃなかったからこそ、このプッツリ感が生きるわけだ。あ~、ポオは本当に上手い。

ところで謎の原住民の言葉は理解不能で、恐怖に脅えた時には「テケリ・リ!」という音を発する。この「テケリ・リ」の意味も謎のまま、アーサー・ゴードン・ピムの大冒険は幕を閉じる。
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