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壜の中の世界

当たり。短篇それもショートショートの21の短篇集。傑作というより佳作なんだけれど、大佳作と言ったほうがいい。奇妙な世界。軸がズレているような、虚構と現実が同軸で共存しているというか、時間と空間が自由自在というか、本来180度違うはずの世界に簡単に移動してしまう、そして読後感がとてもいい。

壜の中の世界 (文学の冒険シリーズ)
壜
一瞬、これは何かのメタファーなのかとか、時代や社会への風刺なのかとか思ったけれど、作者の意図はいざ知らず、そんな勘繰りは捨ててもいいやと・・・かなりニヤニヤしながら読んでいたとの自覚あり。

『優雅な泥棒たち』
泥棒たち(複数!)に入られてもほうっておく邸の主人と、主人とは決して言葉は交わさないのに節度を守って盗む泥棒たち。その関係にも笑えるし、その関係が破局する理由にも笑える。
『抱き合わせ販売』
何を買うにも抱き合わせ販売が義務化されている世界。その抱き合わされた商品と、本当に買いたい商品のギャップが笑える(子供まで抱き合わせ販売の対象)。何よりもすべてが抱き合わせ販売というルールに順応し、それなりに回っている社会がすごい。
『ニヒリート』
何もくっつけられない接着剤を発明した人が、その接着剤でしかくっつかない物質を発明する。何の実用性もないその物質は接着剤とともに大量に売れた。何故なら接着剤のキョウチクトウの香りが素晴らしかったから・・・
『巨人』
巨大な邸宅を借り受けた金細工師が、邸宅にいる見えない巨人の存在に悩まされ、どんな敵でも引き受ける可愛い1匹の子犬をもらう。巨人には悩まされなくなるが、代わりに子犬が牡牛ほどに巨大化していく。
『壜』
老船長がボトルシップをつくる話しが突然、南国の小さな湾ぶ停泊する船に話しにすり替わる。オチはまるで落語だね。
『黒人の料理女』
月に一度、お客に毒を盛ることを条件に男爵家で働く黒人の料理女と、死ぬかも知れないとわかっていても通ってしまう食通たちのお話し。人が死んでいくのにグロテスクではなく、ファンタジーのよう。
『スイミン・スクール』
戯曲形式の会話。大ボケの父親と頭の良すぎる娘とスクールの校長の、噛み合っていないような、でもいるような会話。

その他多数・・・
こちらの世界の常識では残酷なはずなのに、トーンはクールで遊戯的で優雅。Kurt Kusenbergは美術評論家でもあり、帯には「文学のパウル・クレー」とある。クレーね、なるほど。でも私なら「文学のジョアン・ミロ」にする。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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