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三つのブルジョワ物語

南米チリ生まれのJosé Donoso (表記がねぇ、ホセ・ドノソだったりホセ・ドノーソだったりっていうのは止めてくれ) は復刊希望を出している 『夜のみだらな鳥』 に目を奪われ、他の作品探しをすっかり忘れていた。こんなステキな表紙の文庫もあったのね。翻訳は木村榮一氏。小難しい話しでは全くないけれど、相も変わらず読みやすい翻訳に感謝。
三つのブルジョワ物語 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)三つのブルジョワ物語 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
(1994/09/20)
ドノソ

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「チャタヌーガ・チューチュー」
「緑色原子第五番」
「夜のガスパール」

の3篇の中篇集。タイトルどおりスペインの三つのブルジョワ家族・夫婦の話し。彼自身もブルジョワ階級の出身ながら、若い頃は学校や社会に馴染めず本を読み漁る生活をしていたそう。マジックリアリズムとは違う、ちょっとシュールでパラノイア的な話し。「チャタヌーガ・チューチュー」と「緑色原子第五番」は抱腹絶倒な喜劇ながらややグロテスク。最後の「夜のガスパール」は暗いトーンで毛色が違う作品だけれど、「あとがき」にもあるように、主従関係を描いているのは共通。夫=主 妻=従 であったり、母=主 息子=従 であったり、物質=主 人間=従であったり。。。それが絶対的な主従関係じゃなく、途中から逆転する。それとオブセッションと妄想も3篇共通の軸となっている。

「チャタヌーガ・チューチュー」 は、なんたって「ヴァニシング・クリーム」で目や口などの顔のパーツを拭きとってしまったり、手足が分解できて、スーツケースに収められちゃたり、毎朝恋人にVogue風の化粧をしてもらい、顔を作り直すというアイディアに敬服。揚句には、浮気相手のペニスを「ヴァニシング・クリーム」で奪い、自分の旦那のものと交換して、浮気相手の奥さんに渡してあげたり、グロテスクなんだけど、私は笑って読んでしまった。

「緑色原子第五番」 は新しいマンションをお洒落な内装で決めまくった夫婦のモノへの執着が生み出す、モノに支配されてしまう人間の話し。家に訪問客を迎える度に、絵や装飾品や調度品が次々に盗難にあい、円満だったはずの夫婦関係に狂気をもたらすという、これまたグロテスクだけど、笑ってしまうお話し。

最後の「夜のガスパール」は離婚して夫と暮らしている16歳の息子と数ヶ月暮らすことになった、綺麗で自由を標榜する元妻と、何にも興味を示さず、大人の世界に馴染めず、母親の拘束から逃れようと彷徨う息子の物語。彼の吹く口笛がラヴェルの「夜のガスパール」で、その不思議で不安な音色がずっと流れている。自分と瓜二つの浮浪者となり代わり、誰でもない人間となってしまう少年。実は、浮浪者は少年が作り上げたもう1人の自分であるという二重人格というテーマも盛り込まれている。大人の世界から逃れた少年のハッピーエンド物語では全くないのが怖い。

ラヴェルの「夜のガスパール」は聞いたことがなかったので、YouTubeに行ってみた。第一曲「オンディーヌ」、第2曲「絞首台」、第3曲「スカルボ」をすべて一通り聴いてみたけれど、確かに複雑で無気味な旋律。それ以前にどう考えても口笛で吹ける曲じゃないんだけど・・・

「夜のみだらな鳥」は復刊が待たれているくらいなので、古本市場でもちょっといいお値段がついていて手を出せない。代わりに2000円台で手が出せた本を先ほどポチッた。面白いゾ、José Donoso 
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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