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朝まだきの谷間

この本、どうして触手を伸ばしたのか記憶にない。。。 この本をググるとクレオール文学、クレオール文学と、クレオール文学の文字ばかりがでてくる。聞いたことはあってもよくわかっていない「クレオール」という言葉の定義。Raphaël Confiantはフランス語圏クレオール文学を代表する小説家、というよりも日本ではクレオール学の学者という側面の方が強いらしい。フランス海外県、マルチニックの生まれ。マルチニックってどこなのかと思ったら、カリブ海に浮かぶ西インド諸島の中の1つの島で、佐渡島をちょっと大きくしたくらいの小さな島。そのマルチニックを舞台に、作者自身が自らの少年時代をなぞったと思われる物語。何も知らない無垢な6歳の悪ガキ時代から、島の歴史と奴隷性の歴史と、自分が置かれてしまった立場を理解し始めた9歳までが、日常のエピソードを中心に展開される。
朝まだきの谷間朝まだきの谷間
(1997/11)
ラファエル コンフィアン

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本を読む時に、政治的背景や歴史やらはついつい端折って、物語だけを追いかけてしまう私が、今回ばかりは、このマルチニック島の歴史を無視しては通れなくなった。例えばアメリカの白人対黒人の対立の歴史であれば、それは不要だったかも知れないけれど、そんな二元的な区分では到底描ききれない複雑さは、物語の終わりになるまでよく理解できずにいた。そこには純粋な白人と、それ以外の人々、そしてそれ以外としてくくられる人々を更に細分化した差別があった。

これは最後の「あとがき」で説明してくれていることだけれど、マルチニック社会では、一滴でも黒人の血が混じっていれば黒人であるが、白い順に↓のように細分化される。
① ミュラートル(女性はミュラトレス) 外見はほとんど白人と変わらない
② シャバン(女性はシャビーヌ) 肌は白いが顔立ちはネグロイド系で髪は縮れているが、ブロンドから赤毛まである
③ カープル(女性はカプレス) 肌はマホガニー色、髪は縮れていたりまっすぐだったりする。
④ ネーグル・ルージュ  肌は赤色か濃い褐色
⑤ ネーグル(女性はネグレス) ネーグル・ノワールとネーグル・ブルーに分かれる
これに加え、イスラム教を信奉する人や、中国系・インド系などのアジア系までもが混在する社会。

9歳になった少年は、どうして肌の色がみんな違うのかと母親に聞く。
「どうしてみんな肌の色が違うかですって?そう、この国が始まったとき・・・・わたしたちの祖先はみんな同じ肌の色をしていたのよ。みんなが黒かったの・・・・みんな奴隷だった・・・強制的に土地を耕させられていた・・・虐待されていたのね・・・女の人たちは自分たちの子孫の肌を白くするために白人の主人の子どもを生んだのよ・・・生き残るためにね、分かる? それで、ミュラートルやシャバンやカーブルが生まれてきたの」

歴史を辿ると、この島はコロンブスにより発見され、1600年代の半ば主導権を握ったフランス人により島民は虐殺され絶滅したといわれている。そして奴隷貿易によってアフリカから連れて来られた黒人奴隷によりプランテーション農場が出来上がり、本国フランスを潤すことになる。実質的に奴隷制度が廃止されたのは第二次大戦も終わってからのようだが、反植民地運動や同化政策が起こるも結局、フランスの海外県としての自治権しか与えられず、独立は果たしていない。マルチニックにはこれといった産業もないため、結局経済的には本国(フランス)に従属する結果となった。

少年がやがて悟るマルチニックの現実は、本国フランスに憧れながらも嫌悪する屈折感、自らを卑しいものとして見なす自虐性に満ちている。奴隷性がなければ生まれなかったかも知れないクレオール文化・クレオール語に自身のアイデンティティーを探すことは、私には想像も出来ない。
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コメント

[C262] ふぅー・・・

なんてこった。
なんて込み入った・・・!
  • 2012-06-19 01:23
  • さかい@tadoku.org
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[C263] そうなんです。

見た目だけで、白人だの黒人だの黄色人種だのと知らず知らずに分類していた自分自身を思わず恥かしく思ってしまった次第です。

記憶に残っているかどうか?Paul AusterのInvisibleの最終章で、ボルンが住みついた中南米のキリアという場所。あの時は架空の話し(黒人と白人の血が交じり合い、赤毛のアフリカ人、青い目をしたアフリカ人、そしてアルビーノのアフリカ人が生まれた云々)かと思っていたけれど、あれは全くの作り話じゃなく歴史の中の真実だった。それがショック。。。
  • 2012-06-19 22:56
  • Green
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[C264] 日本はまだまだ・・・

遅れている?

これから世界はあらゆる肌の色と、髪の色と、瞳の色が混在することに?

わ! そりゃ、おとぎ話のようだ、楽しみだ!!
  • 2012-06-21 14:43
  • さかい@tadoku.org
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