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メテオール(気象)

長い・・・ 420ページの2段組、字も文庫本並みの小ささ。昨今この量は絶対に上下巻にされるところを、1冊に無理矢理まとめているところはエライ。飽きるとか辛いとかということはないけれど、完読までに1週間かかったよ・・・
メテオール(気象) (文学の冒険シリーズ)メテオール(気象) (文学の冒険シリーズ)
(1991/08)
ミシェル・トゥルニエ

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1930年代、フランス、ブルターニュの田舎町ピエール・ソナントに住むスュラン家の大河ドラマとも言えるけれど、哲学を学んだTournierの、全編登場人物の独白を通した哲学論と言った方がよさそう。登場人物のそれぞれが代わる代わる語るという構成は、結局皆がIdentityを求める哀しい旅の物語でもある。

現実に対応できない父エドワール、妻のマリア=バルバラは数も忘れるほど子供を生み、ジャンとポールの双子を産むとピタリと妊娠が止まる。エドワールの弟アレクサンドルは、長兄ギュスターヴの死によって、スュラン家の家業ゴミ処理業を継ぎ、「ゴミのダンディー」となる同性愛者。レジスタンス運動に生きる意味を見出したエドワールは崇高な死を願うも、その願いはナチスに逮捕された妻のマリア=バルバラに持っていかれ、消えた妻を捜しながら彷徨い、死んでゆく。

全編は、双子のジャンとポールの「双子性」を基に語られるけれど、前半は彼らの叔父のアレクサンドルの物語。彼の語る同性愛哲学は、惚れ惚れするほど格好いいし、異性愛の虚偽性を毒舌とも言える論法で扱き下ろす。「双生児の世界」に対する「単独者の世界」、その中間に位置するのが同性愛者たちで、アレクサンドルは少年狩りの果てにモロッコで命尽きる。社会から疎外される同性愛者である彼が、「双子性」に強く引かれ憧れる姿、同性愛の類似品としてのゴミへの強い執着、精液とペニスに対する嗜好はグロテスクというより一種のスカトロジーでもあり、不快なのか美しいのかよくわからなくなる。

そして後半は双生児、ジャンとポールの物語。両親でさえ区別がつかないジャンとポールは、体は別でも心は一つという、完璧で普遍な双子で、自分たちだけに通じる「風の言葉」で語り合い、「卵形の愛」の中で濃密な少年時代を送るが、その完璧な世界が壊れ始めた時、双子の片割れジャンは逃走する。ジャンを追うポールは、ヴェネチア、ジェルパ、レイキャビック、奈良、バンクーバーとポールの足跡を辿りながら世界を巡り、切り離されてしまった双子の「卵形の愛」を求める。その旅は彼自身を捜す旅へと変貌していく。最後の放浪先は、壁の建設が始まったばかりのベルリン。そこで左半身を失うポールは、その失った半分を無限に膨張させた先に、双生児の関係性〈卵形の愛〉を天空の現象〈メテオール〉にまで昇華させてしまう、という最後は神話のようなエンディング。

Tournierの「双子性」への執着は 「フライデーあるいは太平洋の冥界」から続くテーマらしい。実は何よりもその執着が一番わからなかったかもしれない。次に行くのはこれか・・・

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