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倫敦から来た男

Georges Simenonって何か後を引く。適度に軽くてエンタメ要素も盛り込んでいて、でも人間心理を描いていてう~~ん、と思わせ、フィルムノワール的な暗さと格好良さもあって。。。
倫敦から来た男--【シムノン本格小説選】倫敦から来た男--【シムノン本格小説選】
(2009/10/09)
ジョルジュ・シムノン

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この本、3度も映画化されているらしい。それはよく分かる、映画にしたら絵になる情景と心理描写が満載。舞台はフランス、ノルマンディーの港町。英仏海峡に面したこの港街にはイギリスからの船が定期的に到着する。主人公は港湾駅で働く初老の男、マロワン。妻と2人の子供を抱え、暮らしは楽ではなく、30年間同じ仕事を繰り返す毎日。ある晩、ロンドンから来た男が彼の相棒と争い、海へ突き落とし殺害する場面を目撃してしまう。相棒と一緒に海に投げ込まれたトランクをマロワンが引き上げると、その中には大金が入っていた。それを着服してしまうことから、マロワンの人生が転落していく。ロンドンからやってきた刑事の捜査が始まり、大金の持ち主である親子もフランスにやってきて、大金を横領したイギリス人、ブラウンの捜索が始まると、港町は騒然とし始める。偶然にもブラウンが自分の道具小屋に隠れていることを知るマロワン。イギリスからは彼の妻もやって来ていた。着服した金で贅沢な買い物しても、気が晴れるどころかますます精神的に追い詰められていく。小屋に隠れているブラウンに自分とどこか似た境遇を感じ取り、同情と罪悪感の混じる気持ちで、食べ物を持って小屋を訪れた先で、ブラウンに襲い掛かられたマロワンは彼を殺してしまう。

マロワンは性根は優しく、決して短絡的なことをするタイプでもなく、むしろ地道に質素に暮らしていただけなのに、一旦狂い始めた歯車は、彼のささやかで平凡な日常を砂のようにさらさらと崩してゆく。最後は耐えられなくなり自ら自首し、正当防衛の主張もなく静かに独房に収監されることでようやく開放されるマロワン。でも彼の家族の行く末も彼自身の人生にも希望のきの字もないようなエンディング。

マロワンは夜勤で転轍操作室で働く労働者。転轍機に彼の転落人生がだぶる設定は、読み終えてから、ああ、なるほど、と分かる。それにしても全編洒落もユーモアもなく、本の途中でも、どう考えてもマロワンには哀しい結末しか用意されていないとわかるだけに、ただただ暗い。フランス北部の港町で霧が立ち込める情景描写も、決まり過ぎなくらい決まっている。サスペンスタッチの展開に、一旦読み始めると止まらなくなるんだけれど、マロワンの精神が破綻して、自首してしまう結末がちょっとあっさりし過ぎた感はあるかなあ。でもSimenonってつくづく心理描写が好きな作家なのだと納得。
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