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創造者

この本を導いてくれたのはこれ。 「レオポルド・ルゴーネスに捧げる」と題した献辞から始まるこの本。

図書館のルゴーネスの執務室でこの書物を彼に渡す。ここでボルヘスの夢は崩れ、彼が既に自殺していることを悟る。
”わたし自身の見栄と懐旧の情が、ありえない光景を生み出したのだ。そのとおりかも知れない、と私は呟く。だが、明日は私も死ぬのだ、わたしたち二人の時はない交ぜられ、年譜は象徴の世界に消える、だからある意味では、わたしはこの書物を持参し、あなたは心よくそれを受けたと言ってもよいのではないだろうか。”
創造者創造者
(2000/12)
ホルヘ・ルイス ボルヘス

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Borgesの書くものはどこかこの世のものではないような雰囲気が常にある。そう思うとこの本は驚く程人間臭い。もっともBorgesだと思うと人間臭いのであって、まだまだ充分にBorgesではあるけれど・・・ そのBorgesが最も愛した作品がこの「創造者」だという。エピローグでも、ボルヘス自身がこの詩文集を、雑録・雑纂と呼びながらこれほど個性的なものはないと云っている。この詩文集、編集者から原稿を求められ、何も用意がないと断ったものの、再三頼まれた末、棚や机の中から掻き集めた原稿の寄せ集めだったというが、
「驚くべきことに、書いたというよりは蓄積したというべきこの本が、わたしには最も個性的に思われ、わたしの好みからいえば、おそらく最上の作品なのである。その理由は至極簡単、『創造者』のどのページにも埋草がないということである。短い詩文の一篇、一篇がそれ自体のために、内的必然にかられて書かれている」

250ページほどのさして厚みもない本、詩文集ゆえページの割には文字数も少なく、文章は平易。でもこの余白の多い本、読む速度はどんどん落ちていく。余白に呪いでもかかっているんじゃないかと思う位、読み飛ばさせてはくれない。博覧強記で止まるだけなら、ボルヘス並みに書物を読んだ人は探せばいるのかも知れないけれど、彼ほどその読んだ先に思考を膨らませ、縦横無尽にそれらを行き来した人はいないんじゃないかと思う。後年視力を失った彼は、視力を失ったが故に、さらに見えてくる何ががあったのかも知れない。図書館は宇宙だという彼の言葉は、彼の肉声が垣間見えるこの本を読むと、図書館が宇宙ではなく、図書館を抱合したボルヘスの思考が宇宙なのだと私には思える。 ”「多にして一なる」ボルヘスの形而上的な世界” とあとがきにあるけれど、まさしく、である。

それにしても、全篇に死という言葉がこんなに登場してもいいんだろうか?
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