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木曜の男

実はChestertonは、「バベルの図書館」の第1巻を飾った「アポロンの眼 (バベルの図書館 1)」を読んだ、はずなんだけれど、全く記憶に残っていない。世界文学全集には絶対に登場しそうな、ちょっと取っ付きにくそうなこのChestertonは、喰わず嫌いどころか、恐れ多くて手を出す気にもならなかった (文庫本¥250に出会うまでは)。100年以上前の1905年に発表されたこの本、The Man Who Was Thursday がオリジナルタイトル (この時点で?が一杯飛ぶ)。翻訳は4種出版されているみたいだけれど、私が買ったのは古いバージョンで、初版1960年のもの、文庫とはいえ2001年の第26版となっているから、昨今数千部で消えていく海外文学を思うと、さすが、だ。
木曜の男 (創元推理文庫 101-6)木曜の男 (創元推理文庫 101-6)
(1960/01)
G.K.チェスタトン

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Chestertonは推理小説作家だと言われ、そう思いながら読んでいたら、いや、最後の最後まで、無政府主義者の秘密結社を仕切る「日曜」と呼ばれる男が何者なのか、ワクワク、イライラ期待していたら、哲学書だった。大笑い出来るくらい、絶妙な会話の応酬が続きながら、素直に笑っていられないほど無気味で、何よりも次から次へと逆説に応酬され、最後まで振り回され、眼が回りそうな気分。イギリスらしいと云っていいのか、毒に嫌味にひねりも加わり、こんな構成を考え付くChestertonって天才かも知れない、と恐れいったまま、最後は綺麗にまとめられてしまった。

カトリックに改宗したというChesterton。政治や的な寓話(批判なのか英国的ブラックなのか?)も満載だけど、キリスト教的な寓話はそもそも秘密結社のメンバーを曜日で呼び合うところから始まっている。そこに欠員となった木曜の後任として潜入した詩人にして刑事のサイム。正体はあるものの、無気味で皆から恐れられている議長の「日曜」を追いながら、無政府主義者だと思われていた面々が皆、仮面をかぶり変装した、無政府主義者を追い詰めようと潜入した刑事だと判る。メンバーの正体を徐々にバラしながら、物語は謎の議長「日曜」を追う活劇の様相になってくる。無政府主義者を追っているはずが、無政府主義者に追われ、そう思っていたら無政府主義者だと思われて・・・ と万事が万事この逆説。白だと思ったら黒だった、でも黒も裏から見れば、白なんだよ、とそういうことか。。。

逆説だらけの多面体みたいな小説なので、読む人それぞれ色んな角度から眺めることが可能だけれど、結局 ”正しい” ことを遂行しているはずのインテリ権力集団の潜入刑事たちは、最後に ”議長は神なのよ・・・” というオチで、神の手の平でグルグル弄ばれた、なんだかちっぽけな庶民に成り下がってしまった(笑)

「君たちにこの世界の秘密を教えてやろうか。それはわれわれがこの世界のうしろしか知らないということなんだ。われわれは何でもうしろから見て、そしてそれはひどいものに見える。あすこにあるのは一本の木ではなくて、木のうしろなんだ。あれは雲ではなくて、雲の背中なんだ。すべてのものが前かがみになって、ひとつの顔を隠していることがわかるじゃないか。もしわれわれが前に回ることができたら、――」

次は王道の「ブラウン神父」シリーズでも探してみることにしよう。
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[C290] チェスタートンの本なら・・・

30年前にイギリスでいっぱい買い込んだよ。ほとんど読んでないけど・・・
  • 2012-08-08 13:24
  • さかい@tadoku.org
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  • 編集

[C291] チェスタートンは今の時代なら・・・

それはそれは、大盤振る舞いをしましたねえ。一杯買ってほとんど読まず、ネズミの餌になりかけている?

今Amazonにいくと、ほとんど$0.00で買えます。
ああ~残念だ、お借りして、その本たちに日の目を見せてあげようと思ったのに・・・

といいつつ、気軽に本が手に入るという朗報を知りながら、なんだか味気ない世の中になったなあ。その30年前の蔵書が子孫代々読み継がれる方がいいような気がするんだけど。
  • 2012-08-08 14:00
  • Green
  • URL
  • 編集

[C293] そうだろうか?

いや、30年前にNotting Hill Gate 近くの Portbello Market でほこりっぽい本を買い集めたのは懐かしい思い出ですが・・・ いまじゃ手に入らないだろうなあ、きっと。

そういう意味ではebookで、しかも無料で買えるのはよいことだよ。

でもまずはうちの蔵書をだれかが読み継がないと・・・
グリーンさん、引き取る?
  • 2012-08-09 11:13
  • さかい@tadoku.org
  • URL
  • 編集

[C294] そうだろうか?

ebookで、しかも無料で買えるのはよいことです。っていうか、結局私はブラウン神父シリーズ完全版なるものを買っちゃいましたよ、$0.99で・・・$0.99でシリーズ全て網羅しているらしい。
残念ながら、ウチの本棚はとうとうパンクなので、現在引取り不可です。折角、あ~でもない、こ~でもないと自分で棚にカテゴリーなんか綺麗に並べようと途中まで頑張ったのに、もう隙間に縦横様々に押し込んでます。

それと、昔の懐かしい思い出話しと共に子孫代々本を引き継ぐということは別です。そういうことはどこかでやっぱり残したい。その大きなお世話の昔話を無理矢理聞かせるってことを。。

  • 2012-08-10 00:32
  • Green
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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