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わたしの物語

Amazon.comで薦められ、唯一の邦訳本からスタート。ラテンアメリカ文学界では、既に名声を博しているけれど、日本には紹介されていなかった。掘り出し物になるか?
わたしの物語 (創造するラテンアメリカ)わたしの物語 (創造するラテンアメリカ)
(2012/07/27)
セサル・アイラ

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「わたしの物語」は著者のCésar Airaの自伝的小説らしいのだけれど、”わたしがどのように修道女になったか” がわたしの物語だと書き始めておきながら、今は修道女になった女性が子供時代を振り返るわけでもなく、6歳の主人公セサルの1年程度の物語でしかなく、そもそも女の子であるはずのセサルは、父親から息子と呼ばれ、半ズボンを穿き、男の子として世間では通っている。でもその理由には全く触れない。そもそも修道女はこの本のどこにも現れない。です、ます調の文体、何とも人を喰ったような馬鹿にしたような口調が最初は気になって仕方ない。つまりは拒絶反応ってやつ。嫌いでも止められない凄みがこの本にはある。

控え目に云っても普通じゃない6歳のセサル。父に連れられ、初めてアイスクリームを食べさせてもらう最初のシーン。吐きそうなほど不味いアイスクリームが実は食中毒に感染したもので、アイス屋の店員と言い争いの果て殺してしまい、刑務所に入ることになった父親。入院し奇跡的に命を取り留めたセサルだが その時から彼女の中の何かが壊れる。小学校に通い始めててもその、普通でないこと、から教師には完全に無視され、凡庸な母親と二人で慎ましやかに暮らすも、そこには普通の親子の情はない。グロテスクなエピソードが続き、セサルは自分が、普通ではないこと、むしろ完全な記憶力と明晰な頭脳を持ち、自分の世界は自分が実際に生きている世界とは違うことを認識している。その不遜さというのか、自意識過剰さ、何も知らないむしろ知的障害があるかのように大人たちの前では振る舞い、脳の中では別次元の壮大な思考を巡らせている。こんなに嫌な主人公もいないだろうと思いながら、あまりに強烈なので読んでしまう。

最初、この表紙のピンク色がなんだか分からなかったけれど、読み終わってから表と裏を眺めていたらわかった。ああ、あのストロベリーアイスクリームだ。知らないうちはピンクだけしか見えないけれど、今は分かる、つまりはこの表紙が全てを物語っているってことだった。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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