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ヨーゼフ・ロート小説集4

「ラデツキー行進曲」に続き、Joseph Rothを再び。小説集ということで、
皇帝廟
第千二夜物語
珊瑚商人譚(レヴィアタン)
の3篇が収められ、総計520ページ(あ~、重かった)
ヨーゼフ・ロート小説集 4ヨーゼフ・ロート小説集 4
(2000/03)
ヨーゼフ・ロート、平田達治 他

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「皇帝廟」は「ラデツキー行進曲」の続篇とも読めるトロタ男爵家の末裔フランツの物語。オーストリア・ハンガリー帝国の崩壊からナチスによる弾圧までの時代を首都ウィーンを舞台に描く。貴族や軍人、旧ブルジョワに支えられた古き帝国と、勃興するモダニズムに生きがいを見出す新ブルジョワジーと庶民の暮らしが織り成す重層構造。皇帝廟とは、ウィーンの目立たない教会 「カプチン派修道院霊廟」のことらしく、そこには138にも及ぶハプスブルグ王家歴代の皇帝や王妃達の霊柩が納められるている場所なんだそう。帝国の終焉と、トロタ男爵家として出自を抱えながら、自分はどこに行けばよいのかと彷徨う主人公が物語の最後に辿り着くのがこの皇帝廟。

「第千二夜物語」はパプスブルグ家が帝国の輝きをまだはなっていた19世紀後半のウィーンで、ダンディーな騎兵大尉タイティンガーが破滅していく物語。大尉を取り巻くのは、軍や貴族だけでなく、高級娼婦館にいる人々や庶民出身の下士官、悪徳ジャーナリストなど。その帝都ウィーンは華麗であり、背徳の都でもある。ペルシアのシャーのウィーン訪問から始まるこの物語。シャーの夜伽をという難題を背負うことになったタイティンガーは、娼婦館にいる自分の愛人を差し出すことで乗り切る。が、これが身から出た錆となり、彼の人生は転落を始め、万事休すして自殺を遂げる。その一方でしたたかに生き抜く庶民は実に対照的。物語は5年後、再びシャーがウィーンを訪れることで終わるが、タイティンガーはもうそこにはいない。

「珊瑚商人譚(レヴィアタン)」は辺鄙な小さな町に生きるユダヤ人珊瑚商人の話し。昔気質の品質の高い確かな珊瑚を商いとし、牧歌的な農村共同体という狭い世界で生きている人々。が、工場で生産される安価なセルロイドから作られる人工珊瑚が登場し、人々がそちらに流れていくと、今まで共同体の一員であったはずの彼の異質性に皆が気付き、反ユダヤ主義が顕在化していくる。

卑属な大衆社会と近代技術が結託し、狂信的な民族主義がナチズムを生み出す。それを憎んだロートは、懐古主義やノスタルジアだけでハプスブルグ帝国時代を美化し、過去を礼賛しているのではなく、偏狭な民族主義を超えた汎ヨーロッパというものを夢見ていたらしい。ヨーゼフ・ロート論までは手を出していないけれど、20年前に訪れたウィーンの消えかかりそうな私の記憶を必死に呼び覚ましながらら、ロートの描く世紀末ウィーンを想像するのは楽しい。
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コメント

[C308] おもしろそうだぞ!

うーん・・・ ウィーン、もう一度行きたいしなあ・・・
うーん・・・ 読む時間あるかなあ・・・
  • 2012-09-14 21:39
  • さかい@tadoku.org
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  • 編集

[C311] ウィーンに行くなら是非

読んでから行くべし。

オーストリアってドイツと一緒に括ってしまいがちだけど、行くとあ~~違うと実感できる。でもヨーゼフ・ローとは総じて重いけど・・・
  • 2012-09-15 00:20
  • Green
  • URL
  • 編集

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Author:Green
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