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ロリータ

「ロリータ」もNabokovも名前くらいは知ってたけれど、ロシア(系)となった瞬間に引けてしまう。それでも恥ずかしながら今さら読もうと思ったのは、最近あの古本カフェがやたらナボコフ関連の本を仕入れたからで、でも「ロリータ」も読んでいないのにそっちから先に手を出すのはマズい。
ロリータ (新潮文庫)ロリータ (新潮文庫)
(2006/10)
ウラジーミル ナボコフ

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今まで興味を惹かれることがなかったので、今さら知ったこと。
1) ナボコフはサンクトペテルブルクの貴族の生まれ。ロシア革命後西欧に亡命。ケンブリッジ卒。ベルリン・パリを経由して最後はアメリカへ
2) パリ時代から英語で小説を書き始め、「ロリータ」は元は英語 (あ、そうなんだ)
3) もっと古い古典かと思っていたら、1958年に完成した戦後文学だった
4) その内容からアメリカの出版社に拒否された末、パリのポルノグラフィ小説を扱う出版社から発売。その後グレアム・グリーンが絶賛し、発禁処分も受け、賛否両論入り混じり、ある種のスキャンダル本になりベストセラーにもなる。

様々な尾ひれをつけて不覚にもスキャンダラスな作品となってしまったが、期待しているポルノ小説では全くないので(笑)、手にとってはみたものの期待を裏切られて、途中で投げ出した人はきっと沢山いるんだろう。その位この本は、くどい程饒舌で執拗で(丹念な描写と呼ぶべきか?)、自意識過剰な(繊細と云うべきか?)主人公が、あ~でもない、こ~でもないと(几帳面にというべきか?)悶々と自問する姿は喜劇すれすれの悲壮感がただよう。ナルシストで妄想家で小心者の主人公ハンバートが一人称で語る物語は、前半は少々うんざりする。が、しつこく繰り返されると、それが一種の美学に変貌するのが不思議。これは確実に狙っていた作者の意図なのかもしれない。

これほど有名な作品だから粗筋は端折る。ロシア出身のNabokovが英語で描いたアメリカは、大戦後の影もない程、ひたすら明るく健全で、世俗的で卑猥。ロリータと全米を旅するこの物語はロードムービーでもあり、この元ロシア人はロシア的筆致をもって、このアメリカの俗と毒を、彼の美的センスで扱き下ろしているようにも見える。ここに登場するアメリカ人に所謂、善良な市民は皆無で、旧大陸、ヨーロッパ移民の反道徳的な倒錯者にまんまとしてやられるわけだから、アメリカの出版社が眉をひそめて出版拒否もするだろうよ。。。でも「ロリータ・コンプレックス」という世界的に通用する用語まで生み出してしまったこの本は、Nabokovがそれをどれほど嫌悪しても、少女趣味というものが世の男性の奥底に潜む願望であることを証明してしまったわけだ。

私が読んだのは新訳で、旧訳との比較から始まり、解釈・理解・分析 等々、様々なナボコフ論が巷には溢れ、実は深い深い話しなのだそう。巻末にどっさりとあった注釈は、単なる注釈ではなく、訳者の解釈・解説でもある (全部読み飛ばしたけど)。「ロリータ」は惹き付けられる人にはたまらなく面白い本なんだろう。正直私はあまり好みではない。でも何故だか「ライ麦畑でつかまえて」とだぶってくる。発禁本になったことも含めて、良くも悪くも作品本来の評価とは別の次元で評判となってしまった2つの作品。J.D.Salingerは「ライ麦・・・」が最初の出会いだったものの、その良さがいまだ分からず、グラース家の一連の作品や短篇など、他の作品にはすっかりはまった。私にとってナボコフはSalingerになる可能性を秘めているような気がして、他の本も読んでみたくなる。
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コメント

[C307] おやまあ!

ぼくも「ライ麦畑」はまったく関心がなくて、短編だけで修論を書いた!
  • 2012-09-14 21:36
  • さかい@tadoku.org
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[C314] ナボコフって不思議

しかし、「ロリータ」がこんな本だとは思ってもみなかった。アメリカ的ではないけれど、これはアメリカの本。

古本カフェに上下巻の「ナボコフ短篇集」がある。厚みと値段に負けていまだに買えない。
  • 2012-09-15 00:32
  • Green
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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