ポルトガルに惹かれる者にはタイトルだけで既に魅力的。表紙にはあのIsabel Allendeのコメントものっていてびっくり。
"A treat for the mind. One of the best books I have read in a long time"裏表紙にはこんな評も。
"If you liked Carlos Ruiz Zafon's The Shadow of the Wind, you'll love international bestseller, Night Train to Lisbon" なるほど、The Shadow of the Windと確かに雰囲気が似ている。ミステリータッチの始まりに、暗いヨーロッパ、そしてある本との出合いから始まる物語。
スイスのベルンに住む、ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語を操る古典文献の学者、Raimund Gregorius。尊敬はされつつも生真面目で、判で押したような繰り返しの毎日、でもそれに疑問を抱かず60歳の手前まで来てしまった男。それが偶然遭遇した2つの出会いから、彼の人生が一変する。橋から身を投げようとしているポルトガル女性と、古書店で見つけたボルトガルの本。彼は今までの日常をすべて捨て、リスボン行きの夜行列車に乗る。ポルトガル語の本は、Amadeu de Pradoというサラザール政権下に生きた医者でありながら、レジスタンス運動に身を投じた人物。GregoriusはAmadeu探しの旅を始め、彼を知る人物、友人、妹、教師、恋人たちを探して訪ね歩く。貴族出身で頭脳明晰なAmadeuの本は、自身の苦悩と人生への自問が続く哲学の書。両親や親友との確執、体制側の重要人物の命を医者として救ってしまったことから起こる仲間からの非難、死の意味、生きることの意味。
The Shadow of the Wind が好きなら確かに気に入っていただけそうな本だと思うし、ちょっと現実には在り得ないでしょ・・という設定や展開は確かに共通する(笑)でもあちらが少年版ならこちらは大人版。 登場人物だけでなく、全篇、人生の意味を問い続けるAmadeuの独白と、それを追うGregoriusも自身の人生を問い直す。二人の人生と苦悩と葛藤が、代わる代わる入り混じり、ミステリー色は後半薄まり、起承転結はあるようなないような、どこまでいっても、内面の葛藤を語る哲学が続くので、それを辛いととるか、面白いととるかで評判は変わりそうだけれど、私はとにかくリスボン旧市街やトラムの風景や、ペソアが引用されたりしているだけで、かなり満足してしまった (そんな読み方があってもいいだろう・・・)。
真冬の白の世界のベルンから始まり、冬の暗いリスボン。物語が終わる頃、季節は春になっていいる。最後は明るい未来を提示してはくれないけれど、Gregoriusはきっと救われたのだろうと私は読んだ(けど)。
映画化される(された?)というニュースも見つけた。主演はJeremy Irons。もちろんロケはリスボンなんだろうなあ。Jeremy Irons in Lisbonならそれは見たい。
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