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エバ・ルーナ

いままでIsabel Allendeをストーリーテラーだと気付かなかった私は相当に鈍い。この人は史上最強のストーリーテラー。もう、ただただ面白かった。

エバ・ルーナ (文学の冒険) Isabel Allende
evaluna

舞台は独裁政権下の南米のとある国(これはアジェンデの亡命先、ベネズエラ)。密林の捨て子だったコンスエロは、死体を永久保存できる秘法(剥製作り)を発明した博士の屋敷で家政婦として働き、意識を失ったインディオの庭師と 一度だけ交わり、子供を作った。それがエバ・ルーナ。太陽を意味するエバ。博士の屋敷でこっそりと育てられたエバはお話をつくる才能を持つ少女になったが、幼くして母を亡くし、博士の死によってわずか7歳にして放浪の人生が始まる。ユーゴスラヴィアの未亡人や政府高官の家で働き、逞しくも優しい娼婦の女将の世話になり、辺境の地で商店を営むトルコ人の庇護の元育てられ、今で言う性同一性障害に悩み、女性として生きる決心をした女性と暮らし、ストリートチルドレンからゲリラの指揮官になる少年と恋をする。どんな時でも、お話しを語る、ということを心の支えにして生きるエバ。一方、オーストリアの 北部で生まれたロルフ・カルレという少年は、決して幸福とは云えない少年時代を送り、エバのいる南米に渡り、世界を飛び回る報道カメラマンとなる。ゲリラの指揮官になったウベルト・ナランホとそれを取材し続けるロルフ・カレル、そしてそれに加担していくエバ。

エバ・ルーナに登場する人物は皆、出自のあやふやなアウトサイダーたち。石油が噴出したことで豊かになり、独裁政権から民主的国家へ移行しようと混乱しているベネズエラにおいて、そんな政治的事情とは関係なく日々生きるパワーは逞しいというより清々しい。恋愛もエロティックシーンもあるけれど、生命力に満ち溢れていて、誰と誰がみたいなせせこましさを通り越して、何とも懐が広い。この懐の広さがラテンアメリカなんだろうか?原住民と様々な移民とが入り混じり、混沌とした社会の中で政治体制がどう変わろうが、瑣末で神経症的な現代にはない、太古の人間の生命力みたいなものがきっとあそこにはあるんだろうなあ。

ラテン文学は、時間軸が歪み、現実と非現実とが混沌とするものと決めてかかると、Allendeは物語りの王道を行く正統派。時間をきちんと追いながら、極めて分かりやすく話しが流れていく。登場する人たちは不思議だけど魅力的で、枠組みだけだったら、まるで児童文学にでもなりそうなほどストレート。でも一つ一つのエピソードの作り方、キャラクターの設定、話しの展開、時代背景の盛り込み、これだけきちんと作り込みながら、読み出すと止まらないワクワク感まで味わえる本は、そうそうあるもんじゃあない。この本は夢中になってページをめくる幸せを目一杯味わえる。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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