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フリアとシナリオライター

ノーベル文学賞Weekと題して莫言氏の作品、ではなく、一昨年2010年の受賞者、Mario Vargas Llosaにようやく手を出してみる。ノーベル文学賞を受賞されてしまうと、何だか小難しいものにあたりそうで敬遠してしまうけれど、読んでみてビックリ。Llosaの他の作品はどうもシリアスなものが多いそうだけれど、これはコミックノベルかと思うほど、これでノーベル文学賞でいいのか?と思うくらい、とにかく楽しくて明るい。
フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)
(2004/05)
マリオ バルガス=リョサ

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Mario Vargas Llosaは基本、リアリズムの人らしい。ラテンアメリカ的な精霊が登場したり、死人が語り出したり、時間軸が飛び交う話しではなく、混沌とした政治背景もなく、ストーリー自体は極めて単純。18歳の作家になることを夢見ながら、たまに短篇を書き、法学部に通い弁護士になることを強制され、ラジオ局で働くマリオ君。両親はアメリカで暮らしているため、祖父母の家に下宿しながら、親戚の家を行ったりきたり、ラジオ局のバタバタ具合も街の喧騒も、なんだか活き活きとしている。それが、32才の血が繋がっていないとはいえ、小さい頃から知っているバツイチの叔母さん、フリアと恋に落ちる。この叔母さんが、色気もありながら、男を手玉にもとり、でも現実的で楽天的で可愛げもあり何とも魅力的。二人の恋愛も、何とも爽やかで歳の差なんてないほど、まるで青春のそれ。

さて一方、人気アップを狙うラジオ局はボリビアの人気天才シナリオライターのペドロ・カマーチョを引き抜いてくる。こっちはかなり暑苦しい。自称芸術家は何本ものシナリオを同時平行させ、ほとんど眠らず大量のシナリオを捌く (時に登場人物になりきるため変装しながら仕事に挑む)。これが大人気を博し、その天才ライターの奇想天外なお話しは、ペルー中の話題をさらってしまう。このペドロ・カマーチョが書くラジオドラマが、メインストリームのマリオとフリアの物語と交代に挟まれていくのだけれど、もう、どれもこれもが死人続出のクセに、抱腹絶倒の面白さ。新婚式当日に突然倒れた花嫁が、実は不義の子を身篭っていたとか、軍曹が見つけた正体不明の密航者らしき黒人の話し、ネズミ駆除に執念を燃やす男と彼を憎む妻と娘、金持ちの子息に生まれながらほぼ知的障害と思われるほど通常社会生活ができない少年が、天才的サッカーのレフェリーになる話し、とんでも神父の話し、等々。すべて最後は狂気と殺意と大災害とで、人がバタバタと死んでいく。そしてお決まりは ”さァて、この物語はここで終わってしまうのだろうか、あるいはあの世へと続くか?”という明るい(?!)大活劇。

さてさて問題は、この奇想天外な大活劇が徐々に支離滅裂になり、辻褄が合わなくなり、要はデタラメになっていく。あるストーリで死んだはずの人間が別のストーリーで再び登場したり、そのストーリーでもう1回死んじゃったり、登場人物があっちのドラマとこっちのドラマと交錯したり・・・精神に変調を来し、常軌を逸した天才シナリオライターはとうとう精神病院に行く羽目になる。

本の最後はマリオ君が大人になり、周囲の猛反対を押し切り無理矢理結婚したフリアと結局は離婚したものの、一端の作家になったという後日談で終わる (天才シナリオ作家の後日談まで絡められているというオマケ付)。え~~、それであの破天荒な登場人物が交錯しまくるラジオドラマはあれで終わりかい? 大人になってまともに暮らしている成長したマリオ君より、最後は一人のラジオドラマファンになってしまった聴者はどうしてくれよう・・・
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[C330] はじめまして

はじめまして。国書刊行会の作品を検索してこちらのページにたどりつき、以来いつも楽しみに読んでおります。
私もこの作品大好きです。リョサは硬派な作品も良いですが、こういうばかばかしい作品も大真面目に書いてしまうところが素敵ですよね。ってそれほどたくさん読んだことがあるわけではないのですが。

「悪い娘の悪戯」もオススメです。
ではでは。

[C331] はじめまして

りつこさん、始めまして。ようこそ。知り合い2~3人にしか知らせていない、自分のための読書感想文ブログなので、こんなコメントをいただくと嬉しいやら、ドキドキするやら。。

国書刊行会はやっぱりそそられますね。国書が出版するなら読んでみようと思わせるものがあります。リョサは始めてだったのですが、他の作品も片っ端から読んでみたくなりました。次回はお勧めいただいた 「悪い娘の悪戯」を狙います。

是非またいらしてください。お待ちしています。
  • 2012-10-18 00:15
  • Green
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Author:Green
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流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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