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Mister PIP

「声」かなあ、まず思い浮かんだ言葉が。
島でただ一人残った白人Mr. WattsがC.Dickensの「Great Expectations」を語り聞かせる声、島の住人が海や魚の話しをする声、そして主人公のMatildaの声に出さない声。本は文字だけだから、その声を聴こうと頑張ってみたものの、叫び声は聴こえても、静かなる声は私には最後まで上手く聴き取れなかった気がする。

Mister PipMister Pip
(2010/01)
Lloyd Jones

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物語が与えてくれた喜び(Great Expectationsの主人公であるPIPは友だち)、それを語り聞かせてくれたMr. Wattsに対する思慕、子供のMatildaの目には、ヤシの木と空と、海からの恵みの魚たちと森からの恵みの果物ばかりが描写される。ただ現実はと言えば、彼女の住む島は政府軍と反乱軍の抗争の只中にいて、残酷で理不尽な暴力に彼女も飲み込まれていく。PIPと自分を同じ世界の中で捉え、WattsとC.Dickensを重ね合わせる彼女、現実と空想(虚構でもあるけど)を混濁していた子供時代は幸せだったんだろうけど、Wattsが死に、母親が死に、島を離れ大人になっていく中で、その混濁がギャップになり、現実が虚構を剥がしてゆく。それでも子供の頃の空想の世界があったから、光が見えたんだろうと思えるから救われる。大人たちの確執や、Wattsの過去など最後まで語り切らないで終わってしまうんだけど、本質は(というか真実がどうであれ)そういうことじゃないからいいんだろう。いや、語られなくてホッとした気もする。

この話、舞台は南の島(パプアニューギニア)で、、南の島だから寒さはなく(外で寝られちゃう)、裸足が普通。魚も取れるし果物も実っていて、野放しの家畜も鳴いているし、食べられないけど虫も一杯で、時間の感覚も、潮の満ち引きだとか植物の育ち具合で測るし、陽が沈んだら1日が終わりで、夜明けが来たら1日が始まるような暮らし。時代は1980年代くらいのはずだけど、テレビもラジオも車も一切出てこない。隣の芝生は何とやら・・・だということは分かっているし、残酷な暴力シーンはあるんだけれど、それでもどこか羨ましいわけ。停電と買占めに騒ぐ東京の俗人に、今となっちゃあ、とても住める場所ではないけれど、モノや情報が溢れてかえって首を絞められている俗人だからこそ、何もないことの幸せは憧れなんだよね。

読書後「Great Expectations」を読んでみたくなった!・・・ということは全然ない。世俗の垢にまみれた今となっては、感動出来ずに終わる怖さを思うと、手は伸びないな。。。。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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