Entries

複製された男

ポルトガル好きの私としては、ブログのカテゴリーでポルトガルを単独で設定することはとーぜん。なのに本屋さんに行ってもポルトガルだけが独立していることなんてありえないし、よくてスペイン・ポルトガルとして括られ、最悪「その他」にぶち込まれる。José Saramagoはそんな悲しい日本のポルトガル文学界で現代作家の筆頭(だと思うんだけど)。1998年にポルトガル語世界で初めてのノーベル文学賞も受賞したSaramagoは、残念ながら一昨年お亡くなりになったけれど、この本はポルトガルでは2003年に出版されたもの。調べたら邦訳されていない本も結構ある。つい最近出版されてまだ値段も落ちきれていないけれど、貴重なので早々に入手してしまった。
複製された男 (ポルトガル文学叢書)複製された男 (ポルトガル文学叢書)
(2012/10/22)
ジョゼ サラマーゴ

商品詳細を見る
って、ここまで賞賛しておきながら云うのもなんだけど、実はすごく好きかと言われると微妙な立ち位置。テーマが重い、軽い、ということであれば間違いなく硬派の部類(ノーベル賞だし)。テーマがストレート直球で、だからどうも優等生臭い。今回も「アイデンティティの喪失」 だの 「コミュニケーションの不全」 だのと書かれ、孤独な現代人のアイデンティティー喪失みたいな頻繁に登場するテーマにちょっとう~~ん、と唸ったものの、でもついつい読んでしまうのは、プロットはやっぱり面白くて飽きずに一気読みできる本が多いから。

中年独身の歴史教師 テルトゥリアーノ。やや鬱気味で生真面目な男。ある日レンタルショップで借りて見たビデオに出てきた脇役の俳優が自分と全く瓜二つであるのことを発見する。衝撃を受けた彼はその男が誰なのか、どこにいるのかを探り始める。そして自分と全く同一の人間、アントニオ・クラーロと対面する。そして自ら危険な事態を招く状況を展開し始める。

すべては最後の結末の恐さに集約されている。それも1つの恐怖が収まったと思いきや、最終ページに覆い被せる押しのエピソード。ミステリーを超えて、オカルト一歩手前の恐さ。後半に入るまで、こんなアイデンティティの話しなら、Saramago得意の寓話風に語ればいいのに、なんだか会話は屁理屈のオンパレードでなかなか進まない、と文句を言いそうになったけれど、ラストに用意されたのがこれだったのなら、と納得。複製の連鎖とでもいうのか・・・

ただ個人的な意見としては、「アイデンティティの喪失」 だの 「コミュニケーションの不全」 とか云わず、分身もののオカルト、いや幻想小説と割り切って書いてくれたら、かなり絶賛したんだけどね。「書物の王国~分身」にはもってこいの話し。そうすれば、「彼がオリジナルで、自分が複製された男なのか!」という帯のコピーが断然生きてくる。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/323-4d4c7ff2

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
1 2 3 4 5 67
8 9 10 11 12 1314
15 16 17 18 19 2021
22 23 24 25 26 2728
29 30 31 - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア