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比類なきジーヴス

随分長いこといつか読もうと思いながら素通りしていたPelham Grenville Wodehouse(1881~1975)。 年明けのオメデタイ雰囲気にピッタリな1冊。彼はとにかく寡作なので、40~50冊くらいじゃ、まだまだ3割程度の作品しか読んだことにはならないらしい(一生楽しめそうだ)。読みかけの既存シリーズが気になりつつも、新たなシリーズ開始ということで、礼儀正しく国書刊行会の「ウッドハウスコレクション その1」から開始(なんか新年に相応しいなあ)。英語にしようか翻訳にしようか考えたけれど、イギリスユーモアものは手強いので、1冊目から挫折するのも癪なので邦訳から。どーせ、未邦訳は山のようにあるから、心配しなくてもそのうち(調子に乗れれば)英語しかなくなる。
比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
(2005/02)
P.G. ウッドハウス

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ウッドハウスはイギリスを代表するユーモア作家だけれど、作家なんてものではなく”大家”、けれど、決して文学論講義には登場しない大いなる大衆文学の大家。翻訳をした森村たまきさんも云っているけれど、錚々たる大御所たち(G.オーウェルとかT.S.エリオットとか、バートランド・ラッセルとか、おまけにトニー・ブレアなんかも)も愛読し、これを知らずしてイギリスユーモアは語れない!らしい。働かずとも優雅に暮らせる貴族階級の暮らしぶりを嫌味なく描けるのは、イギリスユーモア文学の特権かもね。主人と執事の関係も、ヒエラルキーだけの上下関係で片付けてしまってはいけないのかも知れない。でも(これまたあとがきにもあったけれど)、「イギリス独特の社会構造に由来する感覚を前提としたウッドハウスの笑いは国境を越えにくい」。この辺りの偏屈さが自虐的笑いを生むんだろうけれど、笑うだけ笑わせておいて、手強いのも事実。

ジーヴスシリーズは、執事のジーヴスとご主人のバーディー・ウースター卿のコンビもの。ご主人バーティーはOxford出たてのいいやつだけど頼りなげなで、バカがつくほど人がいい貴族の息子で(バーティー自身、自分は馬鹿だけど・・・と言っている)、バーティーが全幅の信頼を置いているのが執事のジーヴス。そういえば、怪盗にも弱いけど、執事というのもかなり魅力的な存在。あとがきにあったけれど、ジーヴスは翻訳では執事としたけれど、原文ではbutlerではなく、Valet (gentleman's personal gentleman) だそう。

「おはよう、ジーヴス」
「おはようございます、ご主人様」ジーヴスが答える。
 彼は紅茶のカップをベッドの横のテーブルにそっと置き、僕は目覚めの一口を啜る。完璧である。 いつもの通りだ。熱すぎず、甘すぎず、薄すぎず、濃すぎもしない。ミルクの量もちょうどいい。 また受け皿に一滴たりとも茶はこぼれていない。実にこのジーヴス、驚嘆すべき男である。 ありとあらゆる点でとてつもなく有能なのだ。前からも言ってきたが、何度でも繰り返す。小さな例を挙げよう。今までに使った執事は皆、僕が眠っているうちにどすどす侵入してきては僕を苦しめたものだ。 しかしジーヴスは僕が目覚めるのを一種のテレパシーで感知するらしい。 僕がこの世に復活した、きっかり二分後に、彼はカップを手にふわりと部屋に入ってくる。 一日の始まりに大きな差がつくというものである。


この出だしにやられてそれっきり・・・ もう、これで後は何も語らなくてもいいんじゃなかろうか。ジーヴスはホントに完璧なのよ。しかもウッドハウスが巧いのが、語りはちょっと間抜なご主人バーティーに任せ、ジーヴスは見えないところで手筈をすべて整え、バーティーの抱える難問(愚問、珍問、奇問)をさっさとやっつけ、登場するときのセリフは少な目(承知しました、ご主人様。さようでございますか。かしこまりました、ご主人様。云々・・・)。ジーヴスは決して盲目的に主人に従ったりしない。面と向かっては云わないけれど、ご主人様の間抜けぶりもよく分かっている。でも主人へのRespectがあるし、そこには愛情もある。

なんだかこのふたり、のび太くんとクールなドラえもんのようだ。。。
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[C356] 老後の楽しみ

Jeevesをゆっくり楽しむのはぼくの老後の楽しみです。ところで、Wodehouseの Emsworth卿シリーズがBBCでミニシリーズとして放映されるそうです、今年。それも楽しみ。あ、ぼくはヒュー/ローリーとスティーブン・フライのJeevesシリーズDVDを持ってます。貸しますよ。絶妙の二人です。
  • 2013-01-08 11:31
  • さかい@多言語多読
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[C359] 老後の楽しみはいつから始まるんだろう

あ?まだ始まっていないのか・・・

DVD見ます!貸してください!!Amazonで探してDVD Boxを発見してポチりそうになって一旦堪えたのです。それって英語字幕つき?

とりあえずJeevesの邦訳を大人買い中。そしてKindleで何だかよくわからなかったけどFree版を発見したのでDownloadしてみた。そろそろ著作権が切れるんだろうか?そしたらe-book買い放題になるんだろうなあ。私の老後には間に合いそうだ。
  • 2013-01-09 00:47
  • Green
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[C362]  ほい!

貸しましょう!

[C364] お借ります

貸し借りの手段が明記されていないけど、ま、いいか。そのうち届くのかな?蕎麦屋に呼び出されるのかな?新宿まで取りに行くのかな?
楽しみにまってよー
  • 2013-01-12 22:25
  • Green
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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