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エステルハージ博士の事件簿

去年の夏から寝かし続けていたので、そろそろ。何故か勝手に東欧の作家モノだと思い込んで改めて見直したら、アメリカ人だった(1923年生)。そう思うとこんな本を書くアメリカ人も珍しい。
エステルハージ博士の事件簿 (ストレンジフィクション)エステルハージ博士の事件簿 (ストレンジフィクション)
(2010/11/16)
アヴラム・デイヴィッドスン

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アマゾン様、↓いただきました。
時は19世紀と20世紀の変わり目、舞台はバルカン半島中央部に位置する架空の小国スキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国。法学、医学、哲学、文学、理学、その他もろもろ博士号を持ち、大都ベラでただひとり私兵を雇う資格を持つ、希代の大博士エンゲルベルト・エステルハージがさまざまな怪事件を解決する。30年の眠りにつく童女の謎、盗まれた宝冠の行方、老女と暮らす熊の正体、魔を呼ぶ集会、イギリス人の魔術師の野望、川に伝わる美しい乙女の伝説、そして不老不死の夢…。怪談、スリラー、探偵小説、幻想譚、喜劇、民話に彩られた、異色事件簿。博覧強記の幻想作家デイヴィッドスンの最高傑作がついに邦訳。世界幻想文学大賞受賞。

「眠れる童女、ポリー・チャームズ」
「エルサレムの宝冠 または、告げ口頭」
「熊と暮らす老女」
「神聖伏魔殿」
「イギリス人魔術師 ジョージー・ペンバートン・スミス卿」
「真珠の擬母」
「人類の夢 不老不死」
「夢幻泡影 その面差しは王に似て」

短篇集というよりも、エピソードを連ねて、1つの物語を作り上げたという構成。
これだけ読んだら、架空(といいながら群雄割拠の混沌とした世紀末ヨーロッパのバルカン諸国のパロディーでしょ)に生きる、クールで頭が切れまくる探偵もどきの謎解き本かと思うけれど全然違う。稀代の大博士エステルハージのキャラがどうもボヤけているのが難点だけれど、謎解きの面白さより(オチがないようなものもあるし)、この何とも幻影的な混沌とした都の雰囲気を楽しむのが王道か。数え切れないほどの博士号を持つだけあって、博士の蘊蓄は物凄い(骨相学を語るところはなかなか面白い)。そのペダンティックさに負けちゃいけないと序盤は頑張ってみたが、頑張る必要はない模様・・・ 錬金術、キリスト教宗派間問題、民族間の確執、封建体制、民間伝承と当時の情勢が垣間見られるとはいいながら、それよりも何よりも、摩訶不思議なアナクロニズムの世界。ちょっとドロドロ、時にオカルト、時に法螺話しのような可笑しさ、貴賎問わず怪しげな人々。何が事件簿なんだ?と突っ込んでいい。

架空の大都ベラを擁する三重帝国スキタイ=パンノニア=トランスバルカニアは、最終話でその帝都の衰退・消滅を暗示させる。それを憂うエステルハージ博士と老皇帝の話しは哀しい。
「わが亡き後、帝国はアトランティスと同じく海に沈むであろう。子供たちの、そのまた子らは地図に空しく帝国をさがすことになろう・・・」
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[C367] 笑った!

「がんばる必要はない模様」というところね。
  • 2013-01-15 21:37
  • さかい@多言語多読
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[C370] 笑う本じゃあ、ありません

いや、笑うところではないんだけれど。シリアスな本だったし。

でも、本は頑張って読んではいけないってところは当たっている。
  • 2013-01-16 00:55
  • Green
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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