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青い花

「はまむぎ」 以来ほったらかしのレーモン・クノー。ほぼ新刊で揃えている気の入れように反して、買った本は積み上がったまま。さっき気付いたら、コレクションの発刊はついに完結していた。そしてウチの本棚でも購入は完結していた。あとは読み切るだけ。
青い花 (レーモン・クノー・コレクション)青い花 (レーモン・クノー・コレクション)
(2012/12)
レーモン クノー

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オージュ公爵とシドロランという二人の主人公が織り成す夢と歴史の物語。シロドランは現代(1960年代)のパリ(かな?)で動かない河船で惰眠を貪る。眠っていなければ喰い、そして彼を中傷する落書きをペンキを上塗りして消すだけの毎日。一方のオージュ公爵は、小姓と話す馬をお供に旅をする。1264年から175年ごとに未来に進む公爵一行。1439年、1614年、1789年、そしてシドロランの生きる1964年。公爵が立ち止まる時代それぞれには、十字軍遠征や100年戦争、フランス革命など、マクロとしての歴史が顔を出す。さて、この作品が面白くもあり、混乱する理由は、惰眠を貪るシドロランの夢として、オージュ公爵の時代を超越した旅物語が挟まれるからで、さらに悪いことにそこに章を分けて書き始めてくれるような懇切丁寧な構成はなく、眠りに落ちたシドロランの場面の次の行から、いきなり公爵が登場する。こんな解説ができるのも、結局私が途中で混乱して、レビューだのをよんで理解したからで、それがなかったらいったいどこでこの時空を超える旅と、表裏一体になった二人でひとりの登場人物という構成に気付いただろうか??

沢山の引用・言葉遊び、歴史観に宗教観に精神分析論など、この作品が高い評価を受けたのはこうした要素が満載だからなのだろうけれど、これを1回や2回読んだくらいで楽しめるなんて到底無理 (いや、一生無理)。でもそれがわからなくても、これは充分楽しめる一冊。日本語ではどうにもならない箇所も多かったろうに(だから時々日本語の駄洒落のオチがついたり)、それを云々する気は毛頭なく、あ~よく翻訳できたなあ、と感心した次第。

ストーリーはなんだか断片の集まりのよう。発展のない会話。未来に向かって進むオージュ公爵の時代を超越した、時代を無視した歴史観。眠り喰い、ペンキを塗り直すだけのシドロランの日常。そして現代に辿り着いたオージュ公爵とシドロランの対面。シドロランの恋物語。公爵が辿ってきた教科書的歴史の影に存在する語られないミクロな歴史。そして、エンディング。雨が降り動かない河船が動き出す。雨が上がったまだ泥濘の残る地表のそこここにあるのは、「咲き誇れるは、いと小さき青い花」
どたばたのオージュ公爵とシドロランのやりとりの果てのこの何とも美しい閉じ方。シドロランの河船がノアの箱舟と化す。わからないだらけの相も変らぬレーモン・クノー。降参しても読むのは止められない。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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