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神と野獣の都

絶対にタイトルで損してるね、この本。折角の史上最強の語り部、アジェンデなのに。。。現実である日常のあれやこれやの嫌なことや、ストレスからの開放は、アジェンデに限る。舞台は一気に夢の中、アマゾン探検へ!
神と野獣の都 (扶桑社ミステリー)神と野獣の都 (扶桑社ミステリー)
(2005/07)
イサベル・アジェンデ

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主人公は15歳の少年のアレックス。彼の成長物語でもあり、もちろんアジェンデ十八番の夢中になれる ”ものがたり” でもある。少年少女向けを想定して書かれたものだと本人も述べているので、今まで読んできた作風とは若干違い冒険譚色が強く、太古の時代の時間軸ではなく、現代的なスピード感覚で物語りは展開していく。それでもアジェンデが面白いのは、イイ人ばかり登場する美しい「お話」を書くわけじゃなく、大人同士の醜い争いとか、見栄と欲の争いとか、毒々しい魔術もあるし、死も描くし、キレイごとばっかりじゃないところ。

カリフォルニアで不自由なく暮らしていたアレックス。お母さんが病気で入院することになり、妹達は母親側の祖母へ、アレックスは父親側の祖母の元で暮らすことになる。このお祖母ちゃんがニューヨークで暮らす、作家にして探険家で、アレックスを無理矢理連れてアマゾンの奥地にいると言われている謎の人間型生物「野獣」を探す調査隊に加わる。このお祖母ちゃん、歯に衣着せぬ物言いで、孫をどれだけ思っているかはすごくよく分かるけれど、所謂スパルタ方式だから、15歳の子供にはお祖母ちゃんの愛情はすぐにはわからないだろうくらいの豪快さ。子供であっても今すぐ理解は出来なくても、人間の?世界の?本質をズバリと説く。だからアレックスもこのお祖母ちゃんがかなり恐いし、最初は苦手。が、こちらとしちゃあ、今回最大の魅力的なキャラクターで、アジェンデがこのお祖母ちゃんの声を借りて自身の思いを語っているんじゃないかと思わせる。

他の登場人物たちは、隊長の教授や、カメラマン、医師、軍部の人間、現地のガイドとその娘、インディオたち、アマゾンの資源を我が物にしようとたくらむ実業家、仙人のようなインディオの長老で呪術師、そして野獣と言いながら何だかヘンテコでチャーミングな生物と盛りだくさんで、あの人が敵であっちが味方という図式があるあたりが、ちょっと少年少女向けで物足りないんだけれど、最後にこの敵味方の大どんでん返しがある。アレックスの成長物語ということで云えば、優しいいい子なんだけれど、カリフォルニアの現代社会の中で生きていた少年に、アマゾンの探検は過酷この上ない。魚さえ食べられずパンケーキが大好きな少年は、最初はアマゾンの自然の恵みを一切受け付けられず始終空腹に悩まされる。虫・蛇・蛭からの攻撃も、着ている服が絶対に乾くことがないような湿気も、フカフカの布団も汚れを落とすシャワーもない。このちょっと分かり易す過ぎる文明対比はユーモアもあって可笑しい。

結局、悪人カテゴリーに入るのは、現代社会で自分の財産や欲や名誉ばかりを欲しがる大人たちで、子供やアマゾンに暮らすインディオや現地に人々には、自然に対する畏怖と敬意、動物と人間の共存を語らせたりというのが、若干物足りないんだけれど、自然や神や精霊や呪術といった描写は相変わらずワクワクさせられる。アジェンデのこの描写は実体験なのか、子供の頃に聞かされた御話の記憶なのか、想像力から生み出されるのか??

この「神と野獣の都」もアジェンデファンとしてはどうなのよ、という見た目に仕上がってしまったけれど、さらに上をいく、これはちょっと・・・という邦訳があることに気付いた。「天使の運命 上」 「天使の運命 下」 アジェンデを全く知らなかったら、絶対手を出さなかった (でも今さら見え見ぬふりは出来ない)
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