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千夜一夜物語~バートン版

古今東西、文学の大家の多くは幼少のみぎり、これを読んで過ごしたはず。いやいや、「アラビアン・ナイト」と言ってもらえれば、私だって少し位かすっている。月夜に浮ぶモスクとか、頭にターバンを巻いた髭を生やした恐そうなオジサンとか、艶かしいヒラヒラの衣装を着て踊る女性とか、そんなイメージだけで今まできてしまった。が、改めて千夜一夜物語をググってみると、蘊蓄があり過ぎて手に負えない。
千夜一夜物語―バ−トン版 (バベルの図書館 15)
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「アリ・ババと四十人の盗賊」や「アラジンの不思議なランプ」や「シンドバードの冒険」もこの千夜一夜物語の一部を成しているけれど、実はこれは元からあったわけじゃなく、フランス人のアントワーヌ・ガラン(1646~1715)がアラビアン・ナイトをアラビア語の写本からフランス語に移したそのとき加えちゃったということがわかっているらしい。そもそもが口承の物語の集まりで、その変遷だの歴史だのを理解しようと思うと、それだけで物語が出来てしまいそうな程なので、挫折した。まあ、兎にも角にもまずおはなしを読んでみようじゃないの。先のガラン氏のガラン版に対し、探検家で東洋学者であったイギリス人のリチャード・バートンが1885年から3年かけて英語翻訳を手掛けたものが、このバートン版。千夜一夜物語の官能的な側面をたっぷり含んでいるのがこのバートン版とのこと。

数多あるこの千夜一夜物語からボルヘスが選んだのは、「ユダヤ人の医者の物語」と、「蛇の女王」の2篇。「蛇の女王」に至っては、そもそもの物語の語り手はシャハラザードだけれど、お話しの中にハシブの物語があり、さらにその中に蛇の女王の物語があり、その中に更にブルキヤの物語りがあり、更に更にヤンシャーの物語もあり、とまあ、まるで入れ子のようなマトリョーシュカのような、親亀の背中に小亀を乗せて・・・のような終わりなき物語なんだなァ。これじゃあ、シャハラザードから毎晩お話しを聴くことになった暴君、シャフリヤール王も、若い女性と一夜を過ごしては殺すなんて非道を繰り返している場合じゃなくなったわけだ。

登場するのは、商人や王様、僧侶に魔術師、奴隷に動物に魔人、そして女性。イスラムの世界で軽んじられていたであろう女性が、夜という陰の世界では主役に躍り出る。登場人物が次々に自分の物語を語り出し、この入れ子構造の物語は決して終わらない、だから千夜の後には再び一夜が始まる永遠の夜の世界。そこは西洋ではないオリエントの世界、極東日本とは異なるけれど、どこか東洋の匂いがする。定本テキストもなく、作者もいないこの物語は、伝承という形式の中で改ざん(?)に改ざんを重ねて、今日もなお生き残る。

あ~~凄いなあ・・・これこそ物語だ。
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