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ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利

コナン・ドイルの友人で、ホームズのパロディでも知られるバーの傑作短篇集、初邦訳! エラリー・クイーンや江戸川乱歩が絶賛、夏目漱石の作品にも登場する名作「うっかり屋協同組合」を含む全8篇を収録。
”夏目漱石の作品に登場” に ”ん?” と思ったけれど、それよりも何よりも「うっかり屋協同組合」のタイトルにやられたと言った方がいい。
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利
(2010/10/26)
ロバート・バー

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コナン・ドイルの友人ということは、それなりに古いわけで、1850年生まれ1912年没。スコットランドはグラスゴーに生まれ、その後カナダで暮らし、再びイギリスに戻ってきた。軽妙で現代的に仕上がっているのは、翻訳家の腕だろうけれど、実はミステリーの古典。

”我輩の名前はヴァルモン” で始まるこの話し。我輩は夏目漱石からヒントを得た訳者のアイディアなのか、この我輩で終始統一して自分を呼ぶ探偵ウジェーヌ・ヴァルモンが、過去自分が解明した事件を語る。元フランスの刑事局長でありながら、ある大事件をしくじったために首になり、ロンドンで探偵業を営む、フランス万歳、くたばれ英国の我輩探偵の語り口は、終始尊大で自画自賛の気取り屋、でもすれすれのところで、人間臭くてどこか愛嬌がある。あまりにも我輩を絶賛するその言動はそこまで言うと、滑稽でもあり可愛くもある。

『ダイヤモンドのネックレスの謎』 The Mystery of the Five Hundred Diamonds
『シャム双生児の爆弾魔』 The Siamese Twin of a Bomb-Thrower
『銀のスプーンの手がかり』 The Clue of the Silver Spoons
『チゼルリッグ卿の失われた遺産』 Load Chizelrigg's Missing Fortune
『うっかり屋共同組合』 The Absent-Minded Coterie
『幽霊の足音』 The Ghost with the Club-Foot
『ワイオミング・エドの釈放』 The Liberation of Wyoming Ed
『レディ・アリシアのエメラルド』 Lady Alicia's Emeralds


「うっかり屋共同組合」は別格としても、楽しげなタイトルばかりが並ぶ。このフランス愛国心たっぷりの探偵が、イギリスで探偵をやるという倒錯が一番の見せ所。イギリスvsフランスというのは、パターンなのだろうけれど、異国のイギリスで探偵業を営みながら、この口の悪いヴァルモンは、スコットランドヤードを扱き下ろしまくり、中立国の私としては、どっちもありで楽しませてもらった。イギリスの杓子定規な捜査、揚句、悪人に付け入る隙を与えている法律、捜査令状なんかなくたってこいつが犯人だと思ったらズカズカと乗り込むフランス式、英国貴族の老人はいつもどケチで愛想がなく、嫌味ばかり言っているお爺ちゃんだし、ワインやシャンパンが出てくると手を出さずにはいられないし、イギリス人の身なりへの無頓着さに飽きれ・・・てな調子。Robert Barrはイギリス人ではなく、スコットランド人のカナダ育ち。つまり自虐ネタで笑わせるのではなく、彼自身はおそらく親イギリスではなかったのかも知れない。

トリックを全面的に押し出す話しではなく、当時のご時勢や人間関係(ご主人様と従者、貴族と庶民)の社会背景とそれに対する風刺をふんだんに盛り込むのは、シャーロック・ホームズの話しと似ているけれど、ヴァルモンはホームズのようなガチガチの理論と緻密に証拠を重ねていくタイプとは対照的で、頭は切れるもののどちらかというと直感で動くタイプ。謎解きは案外筋が通っているから納得出来るし、悲惨で不幸な人間を作らないので、終わり方は気持ちがいい。

やはり「うっかり屋共同組合」が絶品だなァ。。。
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コメント

[C410] おもしろそうだけど・・・

ほんとにね、おもしろそう。

でも、調べたら、kindle版がない!

このごろはkindleでないと読めないようになっていて・・・ ぼくは人間の進化の最前線を行っていると思うな。
  • 2013-04-11 20:32
  • さかい@多言語多読
  • URL
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[C411] 進化とな何ぞや?

http://www.amazon.com/Triumphs-Eug%C3%A8ne-Valmont-Robert-Barr/dp/B002HHLMVA/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1365689807&sr=8-1&keywords=Robert+Barr

私はKindle for iPhoneだとどうもいまひとつ読む気になれない人間としては退化した存在だが、Amazonにいって、Robert Barrの「The Triumphs of Eugène Valmont」は2秒で探せる。あらら、古典の特典、$0.00じゃない!
  • 2013-04-11 23:20
  • Green
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[C412] 参った、買った、読んでない・・・

kindle for iPhone はいいよ! もうほんとにこれでなくちゃ読む気にならない。

といっても20世紀から21世紀に移ってくる気にはならないんだろうなあ・・・

きのう川村に行ったけれど、当然休みだった!
  • 2013-04-12 22:35
  • さかい@多言語多読
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[C413] toolの問題ではなく、

21世紀の書物もかなり読んでますけどね。。。

Kindle本をAmazonで探せないのに、kindleを強く薦めるというのが、よくわからないなあ。
  • 2013-04-13 02:00
  • Green
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