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ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら

中世ドイツに実在したと云われる、伝説の悪戯坊主で奇人変人の有名人にて札付きの厄介者で、捻くれ者。彼の悪戯遍歴エピソードが口承で伝わり、15世紀に民衆本としてまとめられたそうだが、口承だけあって、首尾一貫性にはちょっと欠け、各地での伝承がバリエーションを生み、尾ひれもつき、編纂されている印象。日本では「みみずく太郎」というタイトルで子供向けのお伽噺にもなったと知ったけれど、そのみみずく太郎君は、私の読書遍歴では登場しなかった。要は風刺作品なのだけれど、そのブラック加減、スカトロ加減、とにかくキワモノの域に達していて、とても愉快ないたずらとは云えない。
ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずらティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
(1979/12)
藤代 幸一

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とにかくウンコネタばかり。国王だろうと貴族だろうと、職人の親方だろうと、聖職者だろうと、農民だろうと、貴賎問わず誰彼構わず、悪戯を仕掛ける。悪戯というより、自分がいい目をみるとか、金を巻き上げちゃうとか、お腹を満たすとかのために、いっちょ悪戯を仕掛けるわけで、自分をコケにした相手には徹底的に復讐をする。そこに強気を挫き弱きを助けるような正義感なんて全くないんだけれど、ある種無邪気だから笑い話しになり得るんだなあ。巻末の膨大な注釈は、中世ドイツをはじめとするヨーロッパの事情や、地域によって異なるドイツ語の言葉遊びに対する解説が必要だからだけれど、それを抜きにしても、キワモノ加減は充分味わえるし、痛快な悪戯ぶりに爽快な気分になれる(でもウンコネタ多し・・・) どう考えても、道徳的に正しくなく(笑)、シモネタも多いので、子供向け「みみずく太郎」は面白いところをゴソっと端折ったとしか思えない。

最初はあっけにとられていたけれど、慣れてくるとこのキワモノが爽快に思えてくるのは、現状に対する不満解消、憂さ晴らし効果が絶大だから。中世も現代も(そして私も)憂さ晴らしが欲しいのよ・・・ この下世話さ、俗っぽさは、聖域を侵す爽快さってやつだね。2~3ページの短い話しからなる全96話。それぞれにイラストが付くけれど、ビジュアルでもとぐろを巻いたウンコが発見できるのでイラストは結構じぃーーっと眺めた。多いのは相手の言葉尻をとらえた揚げ足とりで、一種の頓智なのだけれど、そこは一休さんのような可愛い頓智であるはずがない。見事な屁理屈こきだけれど、理論的にはアンタが正しい。各地を転々とし、パン職人や皮職人、鍛冶屋や絵描きや教会の寺男として弟子入りし、中世の庶民がこれで網羅されるかと思うほどの職業が登場。どれも成り済ましで、数日の内に悪戯をしかけるか、喰いものいただくか金を巻き上げるかし、ウンコを残してトンずらするという放浪生活。逃げ足の速さは一級品。

さて、行く先々でウンコを存在証明代わりに残したティル・オイレンシュピーゲルも、寄る年波には勝てず、病によりその一生を終える。彼亡き後の埋葬の時までなにやらドタバタ続きで(三つ子の魂百まで??)、結局、棺を埋める作業中の足側の綱が途中でちぎれ、彼は棺の中で立った格好になってしまった。生前の彼を知る者たちが、それが相応しかろうと、そのまま埋葬されたそうな。そして墓標にこう刻まれる。
何人もこの石をもち上げるべからず
ここにオイレンシュピーゲル埋葬されて立つ

あっぱれな人生だ。
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