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千夜一夜物語―ガラン版

折角なので、「バートン版」 と比較してみよう。

千夜一夜物語―ガラン版 (バベルの図書館 24)
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ガラン版からボルヘスが選んだのは「盲人ババ・アブダラの物語」「アラジンの奇跡のランプ」の2篇。「アラジンの奇跡のランプ」はあの”アラジンの魔法のランプ”のことね。これが実は、ガランが創作(でっちあげ?)した似非千夜一夜物語だというから、児童書以来のランプのお話しが楽しみ。語り継がれる千夜一夜物語の末裔にガランも加わっている、ってことだ。

官能的といわれるバートン版に対して、こちらガラン版はどうかというと、この2篇に関する限り、イスラム的強欲への戒め?といったやや教訓的な物語だけれど、日本的常識に当てはめたら、教訓にはならないくらい宝石・財宝の量もレベルも高すぎ。ランプを擦ると煙の中から魔人がでてきて、ご主人様のささやかな願いをきいてくれるドラえもん的可愛さではなく、身分不相応にも絶世の美女であるサルタンのお姫様を手に入れたいがために、此の世のものとは思えないほどの金銀財宝をひょいと出してもらったり、此の世のものとも思えないほどの宮殿を一晩で作っちゃったり、そもそも最初にお姫様と結婚したサルタンの重臣の息子を魔法の力で葬り去ったり、そんな濡れ手に粟みたいな幸運やら、自分の願望を達成するために魔法を使ったりするのは、イスラム社会ではOKらしい。でも人を騙した悪人役、アフリカの魔術師は案外簡単に殺されちゃったりする。アラジンは元々、母親の言うことも聞かず、働くこともしないぐーたら息子だったのに、ランプを手に入れてからは、サルタンのお姫様を取り戻すために冒険もするし、賢く勇敢な若者に変身する (簡単に転換し過ぎやしないか?)。騙すのはよくないけど、金銀や宝石を魔法の力で手に入れるのは強欲とは云わないところをみると、豪奢なものにはどうも寛容だと思われる。お姫様の父君、サルタンは、結構単純で根はいい人というキャラクターで、娘の幸せを願う良い父親役なんだけれど、それでもアラジンが捧げた、自分が持っている以上の目も眩む宝石には驚嘆し、一晩で作り上げた宮殿の豪華さに、結構簡単に娘を差し出しちゃうが、それもOKなのよね。悪役の魔術師と小役人の重臣の気持ちの方が分かる気がする私はきっとアラビアンナイトの世界では生きてゆけない・・・

実はアラジンが住むところは中国(西域)という設定で、悪人の魔術師ははるか彼方アフリカ(マグレブ)からやってくる。つまりはオリエント社会の端と端の物語で、中国という設定は、東洋への憧れが作り出したのかもしれないけれど、モロッコあたりから新疆ウイグル自治区まで馬で旅するというスケール、オリエント社会の民族の混じり具合は、よくよく考えると金銀財宝の豪奢さを上回る壮大さ。

壮大過ぎてちょっと馬鹿馬鹿しくなりそうな(笑)シャハラザードのお話しは、そうはいってもドキドキ、ハラハラの冒険談でついつい夢中になりますなァ・・・
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