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人類の星の時間

Zweigは重い、そしてやたらドラマチック。その過剰さにお腹が一杯になり過ぎる時があるけれど、そのドラマチックさ故に、期待が膨らみまた読んでしまう。「マリー・アントワネット」 に代表されるような歴史ものが得意でもある彼が書いた、世界を変えた一瞬を切り取った12篇の話し。後世から見たら ”世界を変えた一瞬” になってしまうけれど、その一瞬を深く掘り下げつつ、相も変わらず自らの視点と心理描写満載の1冊。これも彼の代表作のうちの一冊。

ツヴァイク全集 5 人類の星の時間 - Stefan Zweig
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さて、「人類の星の時間」とは何ぞや?
時間を超えて続く決定が、或る一定の日附の中に、或るひとときの中に、しばしばただ一分の中に圧縮されるそんな劇的な緊密の時間、運命を孕むそんな時間、個人の一生の中でも歴史の経路の中でも稀にしかない。こんな星の時間--私がそう名づけるのは、そんな時間は星のように光を放ってそして不易に、無常変転の闇の上に照るからであるが--こんな星の時間のいくつかを、私はここに、たがいにきわめて相違している時代と様相の中から挙げてみることをこころみた。

これがZweigが序文で定義した「人類の星の時間」。そしてこれらがその時間たち。

1. 不滅の中への逃亡~太平洋の発見 1513年9月25日 (コロンブスとは別の新大陸発見と黄金の物語)
2. ビザンチンの都を奪いとる~1453年9月29日 (マホメットにもたらされた、ちっぽけな偶然が変えた大きな歴史)
3. ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデルの復活~1741年8月21日 (作曲家ヘンデルの不屈の精神と奇跡の復活物語)
4. 一と晩だけの天才~ラ・マルセイエーズの作曲 1792年4月25日 (フランス国歌を作った無名の大尉の悲しい人生)
5. ウォーターローの世界的瞬間~1815年6月18日のナポレオン (ナポレオン敗北の訳)
6. マリーエンバートの悲歌~カルルスバートからヴァイマルへの途中のゲーテ 1823年9月5日 (ゲーテの希望が潰え、文学史に残る詩が生まれた瞬間)
7. エルドラード(黄金郷)の発見~J.A.ズーター、カリフォルニア 1848年1月 (ゴールドラッシュに生きた男の狂気)
8. 壮烈な瞬間~ドストエフスキー、ペテルブルグ、セメノフ広場 1849年12月22日 (ドストエフスキーの詩篇)
9. 大洋をわたった最初の言葉~サイラス・W・フィールド 1858年7月28日 (太平洋両岸を繋ぐ海底ケーブルがいかに設置されたか)
10. 神への逃走~1910年10月の末 レオ・トルストイの未完成の戯曲『光闇を照らす』への一つのエピローグ(終曲) (トルストイ最後の瞬間)
11. 南極探検の戦い~スコット大佐、90緯度 1912年1月16日 (アムンゼンに敗れても崇高な探検家魂は消えない)
12. 封印列車~レーニン 1917年4月9日 (レーニンが亡命先のヨーロッパからいかにロシアに帰還したか)

全篇ただただドラマチック。ツヴァイグの手にかかると、過去の歴史は客観的視点を大きく飛び越え、深く深くのめり込み、彼自身が情熱的に語る物語に変身する。これらが史実であろうと、脚色が混じろうと、彼の独断だろうと充分楽しんだので一向に構わない。私個人としては、ナポレオンの話しが衝撃的で気に入った。運命は、強く大胆な者を好むものだが、時に奇妙な気まぐれから、”重大な運命を左右する糸が、一瞬間だけまったくつまらない人間の手に握られることがある。” グルシー元帥、善良で誠実な信頼をおける部下でありながら、勇者でも戦術家でも英雄でもない男は、一瞬降りかかった運命を握れるチャンスに対して尻込みする。それを生かすことのできないそんな不適任者に運命は報復を行う (あァ、恐い・・・)
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