Entries

類推の山

René Daumal(1908-1944) 36歳で結核のため早すぎる死を迎えるが、その死の瞬間まで書き続けていたのがこの「類推の山」。未完の傑作にして奇作。彼はフランスシュールレアリスム運動の傍流といわれるが、傍流などと呼んではいけない。なんといってもこれは、
非ユークリッド的にして、象徴的に真実を物語る、登山冒険小説
なんだから。。。
類推の山 (河出文庫)類推の山 (河出文庫)
(1996/07)
ルネ ドーマル

商品詳細を見る
 「類推の山」(オリジナルは Le Mont Analogue)。翻訳者、巌谷國士が翻訳をすることを、本書を偏愛していた澁澤龍彦に伝えると、ちょっと残念そうな顔をしたとか。折り紙つきどころか、折り紙ベタベタ貼り。そして未完ながら、わざと未完にしたんじゃなかろうか?と勘繰るくらい、悔しく残念な途切れ方(その山にさあ、登るぞ!というところで終わってしまった見事な未完成度具合)。首の周りを掻き毟りたくなったけど、終わってしまった。

シュールレアリスムとは云いながら、小難しくも難解でもないその「類推の山」を目指す冒険物語、いや冒険物語は体裁上の話しで、法螺話に近いようなSFチックな設定。さてその「類推の山」とは、

・自然によってつくられたありのままの人間にとって、その峰は近づきがたく、だがその麓は近づきうるもの。
・それは唯一であり、地理学的に実在している。
・そしてその不可視のものの門は、可視でなければならない。

つまりエベレストでさえ登頂可能になった時代に、それよりも高く、そしていまだかつで誰の目にも触れたことのない山、天と地、つまり神と人間を繋ぐ象徴としての山が存在するはず、と信じるものたちが、その山の場所を突き止め、頂上を目指す。今まで発見されなかった理由が、空間の歪みで、その山が存在する島に乗り込むためにはどうしたらよいか?が既に法螺。屁理屈をこねくり回した割りには、案外簡単に麓まで辿り着くが、登山開始までの道のりが長い。島の人々、社会ルールとヒエラルキー。島の奇妙な植物 (強い発芽力と成長力から緩いダイナマイトとして利用されるもの、胞子が破裂し発酵すると突然火がつくきのこ)と動物・昆虫(内蔵を発酵させてガスをつくり宙に浮ぶ蚕)、気候(3日歩くとジャングルから砂漠に行ける)。登山用具(携帯野菜畑!に呼吸用具)の準備。その他諸々。諸々あり過ぎるので、このあたりで終了。不可視だが実在する唯一絶対の山、という設定だけでもワクワクするのに、あとからあとから繰り広げられる細部の話しがいちいち面白い。が、山を目指す遠征隊の8名は真剣そのもの。

法螺話のふりをした形而上小説なのか、形而上のふりをした法螺話なのか?山に象徴される崇高なものを目指す、不可視だが絶対にあるはずの崇高なもの。ドーマルの思想も哲学も満載なのだろうけれど、それは後回しにして、あっと言う間に終わってしまい、しかも途中で終わってしまい、すごく残念ですごく面白くて2nd Roundに行こうかとそう思える本。2回目に読むときは、もっとちょっと重箱の隅々まで突っ込んでみよう。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/392-53da9e91

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- - - - - 12
3 4 5 6 7 89
10 11 12 13 14 1516
17 18 19 20 21 2223
24 25 26 27 28 2930
- - - - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア