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コリーニ事件

「犯罪」を読み、「罪悪」も読んでしまったFerdinand Von Schirach。2作とも評判は上々で、ついつい3冊目にも手を出す。ドイツで35万部、日本では、最近話題の「本屋大賞」の翻訳小説部門で第一位。人気者にはそっぽを向く私でも、過去の実績がものを云い、素通りするにはちょいと惜しい。「犯罪」を読んだ時に聞きかじった ”ナチの黒い影を背負った戦後ドイツの法曹界スキャンダルを題材にした本” を書いている・・というのがどうもこれらしいので、なお更素通りは悔しい。
コリーニ事件コリーニ事件
(2013/04/11)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

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2001年5月、ベルリン。67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、新米弁護士のライネンは気軽に国選弁護人を買ってでてしまう。だが、コリーニはどうしても殺害動機を話そうとしない。さらにライネンは被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り…。公職と私情の狭間で苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが、法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。コリーニを凶行に駆りたてた秘めた想い。そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。刑事事件専門の著名な弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く、圧巻の法廷劇。

まあ、本の紹介というものは、ある程度ドラマチックじゃないとね・・・新米弁護士ライネンと辣腕弁護士マッティンガーの攻防戦は云い過ぎで、二人は敵対する関係といより、法や罪を共有する老若ってところだと思う。”公職と私情の狭間で苦悩するライネン” も格好良すぎで、弁護士に成り立ての彼が最初の仕事を喜んで引き受けてしまったら、被害者が親友の祖父で、子供の頃の遊んでもらった御爺ちゃん。いい思い出しかない上に、その親友の姉に憧れ、今も憧れているから、手を引きたかったってところ。

犯人がコリーニであることは明白で、頑なに何も語ろうとしない彼の殺害動機で中盤まで引っ張る。裁判が開始され、コリーニの動機の原点が、ナチ時代の歴史と戦後の法律の盲点を絡めて明かされる、という運び。裁判ものだけれど、過去の歴史や政治背景に焦点が移るに従い、それはもう有罪・無罪の話しではなくなる。最後に辣腕マッティンガーがライネンに言う言葉、「わたしは法を信じている。きみは社会を信じている。最後にどちらに軍配があがるか、見てみようじゃないか」 つまり、法は人間が作るもので、犯罪は人間が犯すものであるというジレンマなのよね。

今回初めての長篇、とはいえ200ページ足らず。変わらずくどくどした描写はなくすっきりテンポよく進み、一気に終了。一気読みするくらいなので、展開はエキサイティングなのだけれど、実は「犯罪」や「罪悪」で見せたあの乾いた鋭利な文体が、今回は薄れてしまったという印象。過去の回想を入れたり、プロットがどこか作為的で ”作った”感が強い。後半の法廷場面で、新米の頼りなげなライネンがいきなり手練手管を弄するような尋問をするのがどうも違和感があるし、そもそも正義感も名声欲もあまりなさそうな若者が、事件の真相にのめり込む過程が端折られている気がする。前作2冊の衝撃が強かったので、辛口批評になってしまったけれど、売れっ子になったらやっぱりエンタテイメント性が付加されちゃうのかなあ・・というのがちょっと残念 (でも次回作が出たらきっと読むんだろう)

ライネンの住むアパートの階下にあるパン職人のおじさんが云う。チェーン店の生地を焼くだけの美味くもないパンを売るパン屋のおじさん。本当はまともなパン屋でパンを焼きたいけど、今となってはもうそれは出来ない相談だ。お前は弁護士なんだから、弁護士のすべきことをしろ・・・このパン屋のおじさんの存在が一番気になる。と思っていたら、彼のその後の顛末が「パン屋の主人」という短篇になっているらしい。アァ~気になる。
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コメント

[C424] さすが!

の嗅覚ですな。パンやのおじさんがおもしろいんだ・・・!
  • 2013-05-21 10:57
  • さかい@多言語多読
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[C425] で、ポチッた。

東京創元社から出ている「ミステリーズ!」という雑誌の2012年2月号に掲載されている、ということで、早速。。。
  • 2013-05-22 00:43
  • Green
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Author:Green
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