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悪い娘の悪戯

リョサは本当にノーベル文学賞作家なのか?コメディは書くし、エロスも描くし、そして2006年、リョサが70歳にして書いたのは、1950年代から40年に渡る一組の男女の波乱万丈のこんな大恋愛大河小説。読みやすくてすっかりのめりこんで、分厚さもなんのその、あれよあれよという間に読了。読後感も、アァ~気持ちいい。
悪い娘の悪戯悪い娘の悪戯
(2011/12/23)
マリオ・バルガス=リョサ

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スタートは1950年代のリマ。リカルド少年が恋に落ちるのは、華やかでで謎に満ちたチリから来たという転校生の少女。その後舞台は1960年代のパリへ。ペルーで革命を起こそうとする仲間達と行動をともにするリカルド。でも彼には野心もなく、ただ平凡で安泰な暮らしを望み、通訳家の卵になる。そこに少年時代に恋した少女が今度は左翼ゲリラの女兵士となって現れる。そしてキューバに送られた彼女が、外交官夫人となってパリに再び現れる。ひと時彼女との恋に溺れるが、彼女は夫の財産を根こそぎ持って、男と一緒に逃げる。1970年代、ヒッピー全盛期のロンドン。そこで通訳として働く彼の前に、今度は大富豪夫人となって登場。が、過去の結婚がバレ、再び逃走。次は1970年代の東京。そこで謎の貿易商(密輸業者?)の愛人となる。彼のために危険な仕事をし、何かの役に立つことに喜びを覚え、過去に男に支配されることのなかった彼女は誰かに支配され虐待されることに依存してしまう。命からがら逃げ出して、身も心もズタズタになった彼女はパリに舞い戻り、再びリカルドの前に現れる。舞台は再び1980年代のパリ。献身的に介護する彼は借金をし、きちんと心身の治療を受けさせ、彼女と結婚もし、束の間夫婦らしき、平凡で幸せな暮らしをする。そしてそんな平凡さには耐えられないと、再び彼女は逃げ出す。

現れるたびに姿も名前も変える彼女を、niña mala(ニーニャ・マラ ”悪い女”)と呼ぶリカルドは、何度裏切られても会うたびにのめり込み、関係を復活させる。そして手酷く裏切られ、再び巡り会いやはりのめり込む。ひたすらその繰り返し。彼女は贅沢な暮らしを求め、そのためには手段も選ばず、素性を隠し、ウソをつきまくる。分かっていても、会えばすべてを許してしまうリカルドの馬鹿さ加減に呆れ、それを利用しているとしか思えないニーニャ・マラのしたたかさの方がまだましか・・・と思えてくる。

1990年代のマドリード。リカルドも50歳代となり、身体の具合も悪く、今までニーニャ・マラをひたすら追い求めていた彼もさすがに悟りの境地に落ち着き、初老に差しかかろうかという時、再びニーニャ・マラが現れる。げっそり痩せ衰え、華やかさの欠片もない。初めて彼女が彼を必死で探し見つけ出す。東京で受けた虐待の傷が結局彼女の身体を蝕み、死期を悟った彼女は、最後に彼の元に辿り着く。最後の舞台はフランス地中海を望む町。そこにある家と少しの財産を彼に譲り、「ずっと作家になりたかったんでしょう?私たち二人のことを小説に書きなさい。少なくとも一冊分のテーマは充分に提供したでしょう」・・・ 彼女の波乱の人生が幕を閉じることを暗示し、そして小説も閉じる。

1950年から90年代まで、リマ~パリ~ロンドン~東京~マドリードと舞台を変え、合間合間に祖国ペルーの情勢を織り込ませるという大河ドラマ。終盤でニーニャ・マラの出自が分かり、貧困のリマの実情も描かれるし、祖国を離れそして戻らないリカルドも、ペルー社会の一端という脇固めもさすがだけれど、社会性臭さはなく、あくまでこの二人の40年の人生を追っていくという構成。男の側にも女の側にも同情も称賛も沸かない・・・はずだったが、気付いてみれば憎めないこの二人。真面目だが面白くもない間抜け男も、男を利用し続けては裏切る悪い娘も、どっちも望むものを手には入れたわけではないし、愛が成就したというのともちょっと違うが、何があっても我が道を生きた二人の穏やかで安らかな最後は見事。大御所のラブストーリーは贅沢この上なかった。
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[C428] さっそくamazonへ跳んで・・・

買った。kindle版 818円。

[C429] The Bad Girl

へえ~~ The Bad Girlってタイトルなんだ、英語版・・・
似て非なる別モノを想像しそうなタイトル(正直イマイチ)。そう思うと「悪い娘の悪戯」ってタイトルははうまい。

翻訳ものといえども、ノーベル賞受賞者はKindle化が促進されるんだと実感。
これも面白かった↓のでThe Bad Girlがお気に召したならどうぞ。

http://www.amazon.com/Aunt-Julia-Scriptwriter-Novel-ebook/dp/B004QGYWD0/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1369654915&sr=1-3
  • 2013-05-27 20:44
  • Green
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Author:Green
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