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パン屋の主人~ミステリーズ!vol.51

「コリーニ事件」 に登場したパン屋のおじさんの謎がようやく解明された。ミステリーが得意の東京創元社から出しているこんなミステリー専門雑誌にこっそり掲載されていた。 「パン屋の主人」~ フェルディナント・フォン・シーラッハ は単行本未収録の短篇で、「コリーニ事件」の脇役の人生。
ミステリーズ! vol.51ミステリーズ! vol.51
(2012/02/11)
なし

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一番最初に読んだ「犯罪」を彷彿とさせると云おうか、今自分の書いたそのブログを読み返してみたら、そう、そう、と自分の書いた記事を改めて納得する羽目になった。とても短い短篇だけれど、面白かったではなく、恐かった。覗かなくていいものを覗いてしまった気分。ひんやりとしていて、声を荒げることも、感情を吐露することもなく、ただ淡々とパン屋のおじさんの転落人生が語られる。

犯さずに済んだかも知れない2つの殺人を犯したパン屋の主人。妻の浮気相手と間違えて、家具屋の店員を殺害してしまい、刑務所で数年を過ごし、出所後は、マイスターの資格を持ちながら、供給されるパン生地を焼くだけの、しがないフランチャイズのパン屋を営む。過去を封印するように感情を失くしたかにみえるパン屋の主人は、ある日、日本人の音大生に恋をする。一週間かけて試食を繰り返し、精根尽き果てるまで彼女のために最高のタルトを作り上げ、子供のようにドキドキしながら彼女の元に届けると、そこには男が立っていた。そして2度目の殺害。何事もなかったように店に戻ると、パン屋は近所のキオスクの主人に、店をたたんで東京でケーキ屋を開く、と告げる。東京でケーキ屋を開く夢を見て目覚めた次の日に、彼はすっかり音大生のことなど忘れていた。

恐さはどこから来るかというと、殺害シーンが排除されているからだろうと思う。プッツリとそこだけが空白で、場面が転換する。何も知らない読者に与えられるのは、殺人が起きたことを後で示唆するあっさりとした記述だけ。被害者が身に着けていた豹のペンダントが、今はパン屋の主人の手元にあり、”血と肉片はきれいにぬぐい去ってある”・・・という具合に。

”モノクロドキュメンタリー映画、バックグラウンドミュージックなし”の深い闇をまた覗いてしまった。
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[C434] またまた!

新しいシリーズを・・・

今は Philip Kerr のBerunie Gunther シリーズを終わりかけているところ、それが最新作まで行ったら、Montalbano に戻って、それから南西フランスに行って、それからドイツだな・・・

[C435] いいえ、

これはシリーズものじゃありません。
そんなにいくつも抱えてはいられません。JeevesとMontalbanoと最近ご無沙汰のBoschくらいにしておきます (で、時々他をかじってみる)
  • 2013-06-08 23:32
  • Green
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Author:Green
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流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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