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低開発の記憶

原作より映画の方が有名らしい。1968年製作のキューバ映画。それに合わせて「いやし難い記憶」 (1972年) というタイトルで邦訳が出て、その時は英語訳から小田実が翻訳した。今回はラテン文学の翻訳では大変お世話になっている野谷文昭氏。
低開発の記憶低開発の記憶
(2011/05/24)
エドムンド デスノエス

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1961~1962年、キューバ革命直後のハバナ。主人公は西欧に憧れるブルジョアのインテリ。革命には共感せず、祖国を低開発と罵り、父母や妻はアメリカへ亡命するが、ひとりハバナに残り、ようやくわずらわしいものから解放されたと言いながら、廃頽的で優柔不断で理屈をこねるわりには現実逃避ばかり。本を書くといいながら筆は一向に進まない。キューバ―のすべてを低開発と言いながら、自身に対する嫌悪感も同じくらい強い。でも家賃収入で働かなくとも生きて行けるから、やることと言えば、女の子を追いかけるだけ。本が書けないから、街をふらつく。未成年の女の子をひっかけ、ヘミングウェイ記念館に連れていく。ヘミングウェイはハバナが好きだったわけじゃない、ただ逃避先としてキューバに来ただけだ・・・キューバ同様「低開発」な彼女を、かつて妻にしたように教育しようとするがうまくいかない。挙句の果てに、未成年者に淫行を働いたかどで告訴され、収監されるという憂き目に遭う。

どっちつかずの主人公は優柔不断というにはあまりにも痛々しいし、自業自得と決めつけるには、どこか共感してしまう。否定していたかと思うと肯定したり、何もかもを低開発と嘲けて最後には自己嫌悪になる。そう、とにかく痛々しいんだな、この主人公は・・・

ラストでケネディー大統領の声がラジオから流れる。キューバ危機だ。隣で寝ている女の子は英語がわからないから、なんの関心も示さないが、主人公は恐怖に震える。外に出ると海岸をミサイルを運ぶトラックが通る。終始、傍観者であるこの主人公の目からみるハバナの街は、カストロの打ちたてた”夢”の社会主義国でも、ヘミングウェイが暮らしたのどかな南国でもなく、革命が起きようが日々人間が暮らす開発途上国で、遠い国が少しだけれど身近に感じてくる。

映画はどこかで見ることが出来るんだろうか?と思ったらこの本が出版された記念に2011年にトークショー+上映会というイベントがあったらしい。どうも映画が気になる。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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